フェノロサと政府の関係ーフェノロサの闇を覗く⑤ー
今日も生きてます。
フェノロサについてみてきました。
日本美術の恩人と教科書等で称賛されている人を、少し意地悪な目線で取り上げてきました。(ゴメンナサイ…)
参考書は「フェノロサー日本美術の恩人の影の部分ー」(保坂清著、河出書房出版)です。
フェノロサが日本美術万歳!という活動をしてきたのは、高給を貰うことができる日本で働き続けるため、ということを前回まで見てきました。
日本の美術品を海外流出させていた?ーフェノロサの闇を覗く②ー - リアル絵描き日記
法隆寺夢殿を無理矢理開帳させた?ーフェノロサの闇を覗く③ー - リアル絵描き日記
外国人雇用危機を乗り切れ!ーフェノロサの闇を覗く④ - リアル絵描き日記
政府が求めている外国人像を演じていたのかもしれません。
何を政府がフェノロサに期待していたのか?、それに対してフェノロサはどんなことをしたのか?を簡単にまとめてみました。
政府:
国家を揺るがすキリスト教の思想や高まる自由民権運動を止めてほしい。
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政治講義の中で、日本国家は専制権力による統治が必要だということを教える。
東京大学の学位授与式の演説の中で、学生たちに政治への関与を戒める内容の話をする。
☆ちなみに政府が最初に雇ったお雇い外国人第1号が宣教師でありました。キリスト教の思想を広めたく無かった政府は「しまったーーーー!!!」とがっかり。
次の募集からお雇い外国人の条件に宣教師でないことが強調されるようになります。
また、他の教育機関にも宣教師を先生の職に雇い入れない様に通達を出していました。
政府:
迫り来る列強達に対抗するために強くなる必要がある!国民が協力してくれる理論を広めてほしい。
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東京大学や一般に向けた講義で、先に動物学の教授として来日していたモースと共に、ダーウィンの「進化論」を教える。
自分の哲学講義の中で、スペンサーの「社会進化論」を教える。
「世態開進論」という演説の中では、国家を一つの家族に例え、国民はその一致団結によって強力な外敵に当たりうると強調している。
☆「強いものが弱いものに勝つのは自然界の法則である」という「進化論」は、西欧列強に狙われていた弱小国日本には、強くなるために利用できる理論でした。
スペンサーの「社会進化論」は、このダーウィンの進化論を社会に適用したもの。
猿から人が進化した的な側面を持つ進化論は政府が推し進める皇室の歴史とは相反すると個人的には思うのですが、人々はそこをどう受け入れてたのでしょうか?わからんです。
政府:
国粋主義を広める一貫として、日本美術の良さを国民に広めてほしい
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美術団体の講演で、とにかく日本美術の太鼓持ちをする。
特に「籠池会」という団体でした演説は有名です。のちに翻訳され、「美術真説」として出版もされました。
☆美術真説の中で、日本絵画の世界的な優越性を唱えています。
若干油絵攻撃してます。
☆更に、経済的な不安を抱えていた政府としては、日本画が輸出拡大や勧業にならないかという期待もあったと推測されますが、その線は無理でした。
明治16年にとある美術団体が、日本政府が「秀作」とした日本画150点をパリで展示しましたが、なんと一ヶ月半の展示期間中、売れたのはゼロ点であったそうです…。
(フェノロサによると日本画世界より優れてるはずなのにおかしいな)
あまりにも政府寄りの活動と保身に全力投球の活動をしていたため、一部の人たちはフェノロサに対して不信感を持っている人も居ました。
(日本で油絵を広めようと尽力していた高橋由一もその一人。)
フェノロサが活躍していた時代の日本美術の流れや、フェノロサの日本美術称揚活動だけを見ると、なんか変だなあ~?と感じますが、その背景にある政府の意図を見てみると明快ですっきりです。
当時油絵を描いていた作家たちは、理不尽な扱いを受けて、肩身が狭い思いをしていたことでしょう。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回最終回です。