リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

「ツナ缶の惨劇」-アンディ・ウォーホルの闇-

今日も生きてます。

 

「食べる西洋美術史ー最後の晩餐から読むー」(宮下規久朗著、光文社新書)を読みましたが、今までわからなかったなかった西洋美術史を理解できて楽しいです。

 

本の中ではアンディ・ウォーホルの作品を一番最後に取り上げています。興味深かったので、今日はアンディウォーホルの「ツナ缶の惨劇」という作品について取り上げたいと思います。

 

 

昨日はキャンベルスープ缶について取り上げました。↓

akashiaya.hatenadiary.jp

 

キャンベル・スープ缶の作品で、大量生産や、大衆文化の賛美描いたウォーホルですが、その闇の部分を表現した作品も翌年発表しています。

 


「ツナ缶の惨劇」1963年

 

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ある事件が元となり制作された作品です。

 

ある事件とは、スーパーのツナ缶に含まれていたボツリヌス菌にあたって主婦二人が死亡したというものです。

 

作品には警察が押収したツナ缶の写真と、新聞に掲載された被害者である主婦二人の写真が組み合わされて使用されています。

 

当時たくさん販売されていたパッケージ食品(今も販売されている)の安全性の神話が崩れたということが読み取ることがでるそうです。飢餓を克服した人類ですが、現代では「食べる」ということが死と隣り合っていることを意識させられる作品です。

 

ウォーホルは交通事故や自殺など、新聞で報道される現代における死を主題にした「死と惨事」のシリーズの作品も制作しています。何度も画像を反復するアンディ・ウォーホルの表現は、人間の「死」すらも、今の情報化社会の中では消費されていることを表現しているかのようです。現代版ヴァニタスです。

 

 

 

 

 

 

 

 

今までブログでは、備忘録的に「食べる西洋美術史ー最後の晩餐を読むー」をまとめてきました。

 

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本は最初のレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐から始まり、アンディ・ウォーホルの最後の晩餐で終わります。

 

この画題に対する考え方が本を読む前と読んだ後では変わります。

 

西洋美術史の中の「食べる」絵画は、他の画題と同じように宗教的な意味合いが強いものから始まり、人類の食料事情に影響されながら変化していきました。

 

絵画の社会的な背景だけではなく、食べ物の絵画的な表現まで触れられていて新しい発見の連続でした。

 

随所随所に作者の食べ物に対する執着があって面白い。「食べる」ってほぼ万人に興味のあることですよね。

 

 

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本に最後に取り上げられているのは↑のアンディ・ウォーホルの作品です。

本を読んでいて特に思ったのは西洋美術の作品はキリスト教と聖書の理解が無いとほぼ解読不可能なんだなーということ。それだけではなく、作品から何を感じ取るかも文化の差で全く違うと思う。というより根本的に感動することができないのではと思った。

 

上のウォーホルの作品も、「最後の晩餐」が赤く染まっているだけではなく、赤という色がキリストの血であるワインの色を想像させるらしい。

パンをみてすぐに聖体をイメージできるような文化なら理解できるが、私は理解はできるが、作品から感じることは、その文化に育った人と同じようには無理だと思います 

 

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

akashiaya.jimdofree.com