頭から石が出てきた!愚者の石とは?ーオランダで流行した不思議な手術風景を描いた絵画ー
今日も生きてます。
『賢者の石を探す錬金術師』
ジョセフ・ライト ジョセフ・ライト画、1771年
ハリーポッターの映画が好きです
個人的には第一作目「ハリーポッターと賢者の石」がワクワク感があって一番好きです。「賢者の石」というものの存在を知ったのはハリーポッターがきっかけです。
もともと「賢者の石」というのは中世ヨーロッパの錬金術師が、金ではない金属を「金」に変えることができると考えられたものです。その後、不老不死を与える力があるとも考えられるようになります。
愚者の石とは?
「賢者」の石があれば「愚者」も石もあるのか?ということで、ネーデルラントでは、中世から17世紀にわたって、頭の中の小石が大きく成長すると愚かになる、という伝承がありました。ネーデルランドの言葉で「愚か」という意味の言い回しに「頭に小石を持つ」というものがあったそうです。そして石を切除するのは錯乱状態や痴呆などの治療とみられていました。
1571年には実際に手術された記録が残っているそうです。(怖い)
医療や科学が現代ほど進んでいなかった時代はやぶ医者も多く活躍しました。その現実を反映するかのように、絵画の画題にも藪医者(?)が活躍する怪しい手術を取り扱ったものがでてきます。そしてその中に「愚者の石」を取り除く手術を描いたものもあります。
愚者の石を取り除く手術風景を描いた作品を見ていきましょう。
「外科手術(愚者の石の切除)」
ヤン・サンデルス・ファン・ヘメッセン画、1550‐1555
出典:Jan Sanders van Hemessen - Wikipedia
人の頭の中にメスを入れる難しい手術を楽しそうにする担当医怖すぎますね。
助手(?)もあくびをしています。
奥の女性は偽薬でも調合しているのでしょうか。
頭から石を取り除かれている患者は鑑賞者である私たちに助けを求めているようにも見えます。暴れないように身体を椅子に縛り付けられていますね。
「愚者の石の切除」
Pieter Quast画、1630年頃
出典:Category:Pieter Jansz. Quast - Wikimedia Commons
お医者さんのメスを構えるポーズが面白いですね。
助手二人は心配そうに成り行きを見守っていますね。
(※個人的解釈です。)
後ろ二人は手術を待っている人でしょうか?
「思ったよりも痛ぇえええ!!!!」という心の叫びが聞こえてきそうないい表情の患者さんです。
「愚者の石の切除」
Marcellus Coffermans画、1552-1600頃
出典:Category:Marcellus Coffermans - Wikimedia Commons
先ほどの二点の絵画と違ってこの作品に描かれた人物たちは、クールな表情をしています。
後ろの人々は取り出した石からを手に何か話し合っています。
というか一番後ろで鋭利な長いサムシングを持っている人怖いですね。頭にはちまきをまいてもらって何かをやる気満々です。
お医者さんは厚底靴を履いて淡々とメスを入れています。
患者さんは「痛くナーイ」という余裕なお顔です・
賢者の石は有名ですが「愚者の石」もあったなんて驚きです。実際にその迷信をもとに手術が行われたのはさらに驚き。
現代でも未来人にはびっくりの迷信がたくさんあるんだろうな。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考:
「あやしいルネサンス」(池上英洋さん、深田真里亜さん著、東京美術)