中世フランス貴族 驚きの終活「トランジ」ー腐敗する自分の彫刻を墓標にしたわけとは?ー
今日も生きてます。
先日、用事で郵便局に行きました。待ち時間中に置かれているチラシを眺めていたのですが、その中に「終活」をサポートするサービスもありました。
老人ホーム・遺言相続・葬儀・お墓など…終活に関することなんでも相談に乗ってくれるというものです。個人的には全て自分で決められることなのでは…?と思いますが、多大な資産がある悩ましい人にとっては良いサービスなのかもしれません。
墓石の代わりに木を植える「樹木葬」、海に骨を散骨する「海洋散骨」など…価値観が多様化していると言われる現代ですが、亡くなった後どうするかも多様化しています。
本題とは関係ないのですが、葬儀について調べていたら面白い記事を見つけたので少し紹介します。
袈裟を着たロボット
株式会社ニッセイエコという会社が新しい葬儀のサービスを始めたそうです。
ニッセイエコのサービス紹介ページです。↓
リンク先のページからサービス内容を引用します。
■サービス内容
<ロボット導師>
ロボットの読経による、全く新しい弔事をご提案。菩提寺の無い方や、霊園や納骨堂を求めたい方、檀家制度にとらわれたくない方など、葬儀に関する様々なニーズに応えて生まれたのが、ロボット導師です。ご葬儀、法事法要、戒名授与などの場でご希望の宗派に合わせてどんな場所でも読経いたします。
<電子芳名帳>
今まで手書きで行われていた、芳名帳記入をIT化。ご葬家様の負担も減り、より葬儀自体に集中できるようになります。・いくらお香典が集まったかがタイムリーでわかるので帳場での作業が軽減されます。
・返礼品を参列者がその場で選択できます。
・最終的に様々なデザインの芳名帳に印刷が可能です。
<ネット葬儀サービス>
葬儀または法事をインターネットを介してライブ配信し、参加できない方にもスマホ等で疑似参列ができます。
総括すると、IT葬儀のサービスです。
お経を読んでくれるのは、袈裟を着たpepper君。YAHOOニュースに掲載された画像には、実際にお坊さん姿でお経を読むペッパー君がいました。
正直かわいかったです。(笑
芳名帳記入をもIT化、葬列のライブ配信など…これはやろうと思えば自分たちでもできそうな感じがしなくもないが。
ライブ配信なんかは遠方で来られない人にとってはありがたいかもしれませんね。
AIBOの葬式
出典:Category:Aibo - Wikimedia Commons
Bradhall71 - Brad Hall, パブリック・ドメイン,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11147151による
千葉県いすみ市の日蓮宗光福寺では、2015年から「AIBOの葬式」が行われているそうです。AIBOとはソニーが発売した犬型のロボットです。
2018年には100台以上のAIBOが供養され、袈裟を着たAIBOがお題目を唱える演出も行われました。
なぜこのような葬式が行われるようになったかというと、2006年にソニーはAIBOの発売を中止し、それに伴い修理のサービスも2014年に打ち切られたことがきっかけです。
ソニーの元技術者たちが運営している電化製品の修理工房「ア・ファン」にはAIBOの修理依頼が寄せられましたが、必要な部品はもう生産していません。
そこで、他のAIBOから部品を寄贈してもらうことで修理していこうという話になります。そうすると、ドナーとなるAIBOは死んでしまうことになります。そこで光福寺の住職が協力してAIBOの葬儀を行われることになりました。
機械の葬儀⁉こう考えると、遠い未来にはロボットに住民権的なものも出てくるかもしれませんね。
しかしこれまでも人形や道具の供養など、日本では様々なものの供養があるので、受け入れやすいかもですね。
私も今のパソコンが故障してしまい、修復不可能になったら、供養したくなるかもしれません。
さて、現代の葬儀の価値観を見たところで、今日は14世紀フランスを中心に流行した墓標「トランジ」を取り上げます。
(少しショッキングな画像かもしれません。)
朽ち果てる自分を模した彫刻を墓標に!?「トランジ」
ベルギーの16世紀のトランジ。
"l’ome a moulons"(ちりぢりなる人間の意)と地元で呼ばれる。
Jean-Pol GRANDMONT - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=289697による
朽ち果てる身体に、虫が這いつくばっている…少し不気味な彫刻ですが、実は墓標です。しかもこの墓標をつくらせたのはお墓に入った本人というのだから驚きです。
「トランジ」は、14世紀フランスから始まり、中世からルネサンスの間ヨーロッパの貴族や枢機卿などの墓標に用いられました。墓標は、朽ちる過程の遺体の像やレリーフです。
12‐16世紀のフランス語で「transi」は死者について使う名詞であり、その動詞形のtransirは「死にゆく」「通り過ぎる」という意味で用いられました。
トランジを作ったのは富裕層です。多くは遺言状の中に「死後〇日経過した姿で制作してほしい」と指定されました。
出典:File:StMaryHL Ledger arnt Schinkel 1497-001.jpg - Wikimedia Commons
なぜにこのような自分の姿の彫刻を残したかというと、カトリック教の考え方が由来しているようです。
キリスト教で肉体の腐敗は罪の証です。(聖人の肉体は腐敗していないようだ。)
しかし、罪の証はまた告解の証でもありました。カトリックの教えでは、告解すると罪は軽くなります。なので墓標に罪の証&告解の証を表現することで、罪を軽くする目的がありました。
また、墓標に祈りを捧げてくれる人の罪も軽減する効果があると考えられていたようです。
高僧の墓碑では、傲慢の戒めや魂の救済のプロセスなど多数の警句やメッセージが込められました。死んでもなお、みんなを救済しようという意思が素晴らしいですね。
トランジの流行は14世紀の後半から16世紀までであり、ルネサンスの開花とともに消滅しました。
ルネ・ド・シャロンのトランジ
MOSSOT - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15584796により引用
自分の墓標作るほどのお金持ちも、亡くなると他の人間と同じように肉体が腐敗していくんだなーと思うと、この世の儚さ痛感しちゃいますね。
私がもし墓標作ってもらえるのであれば、全く似てなくていいから絶世の美女として彫ってほしいです。(墓参りに来てくれた人々の眼福になりたい。)
時代が変わると死に対する価値観も全く違うんですね。
現代は100年時代と言われて、50歳になってやっと折り返しじゃないですか。死を身近に感じることなかなかできないです。むしろどうやって自分の力で100年生き抜くか…そこの問題が大きすぎて、死後のことなんて考える余力がありません。
葬式はペッパー君で、骨は道路とかのコンクリに混ぜて使ってくれよ。と思ってしまいました。来世は立派な地縛霊としてデビューです。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。