西洋美術のタブーと謎!なぜ二枚あるの?マハって誰?「裸のマハ」と「着衣のマハ」
今日も生きてます。
前回撮影雑談スキップしてしまいましたが、今日はゴヤの作品を取り上げます。
前々回西洋美術の伝統では、体毛は髪の毛と髭以外は表現しないという話題を取り上げました。
美しさに「毛」はいらない!!!なぜ陰毛を描かないのか?西洋美術の疑問を考える。
要約すると、古代ギリシャの時代の美意識の中には、無駄毛がないことが含まれていて、その古代ギリシャの彫刻などをお手本にしてきた西洋美術の絵画は体毛を描かなくなった。ということです。
そんな西洋美術のタブーである陰毛を初めて描いたと言われる絵画がゴヤの「裸のマハ」です。
ゴヤ画「裸のマハ」1797-1800頃
女性の官能的な美しさを全面的に表現している作品ですね。
裸のマハを誰が描いたのか?
描いた人はフランシスコ・デ・ゴヤです。
ヴィセンテ・ロペス・イ・ポルターニャ画
スペインで18‐19世紀に活躍した画家です。
40代にはスペインの画家として最高の地位である宮廷画家に上り詰めます。
その後不治の病に侵され、聴覚を失ってしまいます。
ゴヤの作品として有名なものは聴覚が失われた後の作品が多い気がします。裸のマハも聴覚が失われた後の作品です。そのほかにも代表作として「マドリード」などがあります。
他にゴヤの作品で有名なものは「黒い絵」シリーズです。
ゴヤは1819年に「聾者の家」と呼ばれる別荘を購入し、風刺がきいた「黒い絵」と呼ばれる壁画を14枚描きました。の中で有名なものの中には「我が子を食らうサトゥルヌス」があります。
ゴヤ画「我が子を食らうサトゥルヌス」
ゴヤの有名な作品の中の一つに『カルロス4世の家族』があります。
宮廷画家として王族の絵を描く機会があるのは当然のことと思います。
ゴヤ画『カルロス4世の家族』
しかしその家族の描き方が従来の宮廷画家と少し違う。
よく見ると王妃は意地悪そうだし、王は気弱そう…
モデルを美化して描いていませんね。むしろ少し皮肉っぽい描き方です。
ゴヤは忖度ゼロの宮廷画家だったようです。
二枚のマハ
ゴヤ画「着衣のマハ」
裸のマハのほかに似たような構図で「着衣のマハ」という絵があります。
見比べると全く同じというわけではありませんが、着衣のマハは裸のマハに服を着せたものっぽく見えますね。
何故二枚描かれたかというのは定かではなく、カモフラージュなど、様々な説があると思いますが、私はエロスが目的だろうと思います。(個人的解釈)
誰が注文したのか
この二枚の作品を誰が注文したかははっきりしていませんが、絵が保管されていたのは1792年ー1797年と1801年ー1808年スペインの首相であったマヌエル・デ・ゴドイの家です。
なのでマヌエル・デ・ゴドイが注文者なのでは?と考えられています。
ゴヤが描いたマヌエル・デ・ゴドイの肖像
一説によると来客者にこの絵を見せて楽しんでいた…というようなものもあるようです。(あらあら)
二枚のマハの影響
なぜゴドイが自宅に隠していた作品が世に出たかというと、ゴドイが失脚したからです。そして家財が没収され、この作品が現れました。
スペインは当時厳格なカトリックの国だったのでこの絵の破壊力はすさまじかったようです。(キリスト教の神様って人間の欲望に厳しいよね。)
当時スペインでは裸婦像もご法度だったのでこんな煽情的な作品がすんなり受け入れられるのは難しいですね。ゴヤはこの作品以外に裸婦を描いていません。
ゴヤはこの絵を描いたために異端審問所に呼び出されます。
そこでだれから依頼されて描いたのかを聞かれますが、口を割ることは無かったようです。
ちなみに作品が描かれた順番は裸のマハが先です。
マハって誰?
この題名の「マハ」は人の名前ではありません。
「人騒がせな名画たち」の著者木村泰司さん曰く「マハ」は「マドリード下町出身の派手な装いの奔放な女」といったようなニュアンスの意味のようです。
この作品が後年王室のコレクションになるとき、目録には「マハ」ではなく「ジプシー」と記されました。
モデルはゴドイの愛人とも、ゴヤの愛人とも推測されていますが、本当のことはわかりません。
二人のマハの行方
ゴヤの異端審問の後、絵は100年弱の間プラド美術館の地下にしまわれました。焼いたり、捨てたりはしないのが不思議です。何か証拠として残しておきたかったのでしょうか…。
1901年に初めて公開されました。
「着衣のマハ」のほうは来日したことがあり、私も見たことがあります。
ゴヤは忖度無しの画家であったから西洋美術史の伝統を破る表現(体毛表現)ができたのかなと思います。
また、ゴヤが自分の別荘の壁画に描いた自分のための作品と、二枚のマハはだいぶ趣が違います。
なので二枚のマハは秘密の注文を受けて描かれたものと推察します。(多分ゴドイ。)内密な作品だからこそタブーを破ることができたのかもしれませんね。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。