リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

日本の美術業界のいろは①ー画廊の種類ー

今日も生きてます。

 

くももんを視界の隅に感じながら作業しております。

(※くももんとは、いつからか部屋に住み着いている黒いクモ。白い壁に黒いボディが良く映える。思い切ってくももんと命名。)

 

 

 

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「銀座の画廊経営」

銀座柳画廊 副社長野呂洋子さん著

株式会社ファーストプレス発行

 

を読んでいます。

 

著者は銀座に画廊を構えている柳画廊の副社長である野呂洋子さんです。野呂さんの経験から、日本の美術業界についてわかりやすく書かれている本です。

 

私は百貨店で絵画を販売したこともあるので、知っていることもありましたが、知らなかったことがたくさんあり、しかもとても興味深い内容でした。

 

2008年発行の本なので、状況は変わっているかもしれませんが、美術に興味がある人も無い人も楽しめる本だと思いました。日本の美術業界を知るという面からも楽しめますし、全く美術とは無縁の野呂洋子さんが美術の世界に飛び込んで奮闘していく伝記としても楽しめます。

 

 

どこの業界もそうだと思うのですが、実際にやってみないと知ることができない多数のルールがあります。困ったことにそれはどこかに書かれているわけではなく、暗黙の了解や口伝で共有されています。

 

私は美術業界の方主催のアートマネジメント講座を受講していろいろと教えてもらいました。(でも実際にやってみないとわからないことが多かったな…)

 

そもそもどんな経緯で画商さんになったり、画廊を開いたりするのかも不思議ですよね。

 

ちなみに私が直接聞いたところでは、

 

・絵が好きだけど、自分では作れないから画商になった

・初めは人の画廊で働いていたが、自分がいいと思う作品を販売したいと思って独立した。

・儲かると思ったから!

 

などなど、画商さんによって様々なようです。ほえー

 

 

「銀座の画廊経営」の著者である銀座柳画廊副社長野呂洋子さんはどういった方かというと…

 

野呂洋子さん(「銀座の画廊経営」本文と著書紹介より)

 

・東京で生まれ、三姉妹の次女としてのびのびと育つ。

慶應義塾大学理工学部卒業

日本アイ・ビー・エム入社

システムエンジニアとして活躍

・野呂好彦氏と結婚後、日本アイ・ビー・エム退社

・銀座柳画廊を野呂好彦氏と共に創業。

 

現在銀座柳画廊副社長

 

もともとは美術とは全く違う畑のお方です。

結婚を機に美術の業界に入られたようです。

 

美術に対して一般の方の感覚がわかる方なので、本の中では美術の不思議ポイントがわかりやすく解説されています。

 

今日から興味深い部分を私の個人的な経験談も加えながら取り上げていきたいと思います。

 

 

画廊の種類

 

「画廊」といっても複数種類があります。

 

 

 

企画画廊

 

企画画廊は画廊を経営している人が展覧会を企画し、美術品を画廊にきたお客様に購入してもらい、そのお金で運営しているところです。

商品となる美術品を集めるのも画廊の経営者です。

 

「銀座の画廊経営」によると、絵描きから作品を買い取ったり、委託のような形で一時的に借りたり、通信販売を行うこともあるようです。そしてデパートにある絵画のほとんどが画廊から委託されたものです。

 

デパートでは幾人かの画商さんと関わりを持っていて、年に何回かそれぞれの画商さんがデパートの画廊スペースで展覧会をしているのが常のようです。もちろんそうでない場合もあります。

 

ちなみに画商さんが商品である絵画を絵描きから委託されている場合、売上金はデパートと画商と絵描きの三人で分けることになります。割合は契約によって違います。

 

絵描き目線ですが、企画画廊で展示するときは契約内容にもよりますが、画廊の経営者を信じて大事な作品を預けるという感覚です。展覧会の趣旨や集客・接客その他の事務的なことは企画画廊の経営者に任せることになる場合が多いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

貸し画廊

 

美術専門のレンタルスペースととらえて良いと思います。作品を展示したい作家がレンタル料を支払って展覧会を開催します。

 

ちなみにこのレンタル料はところによりまちまちです。私はレンタルスペースを自分で借りて展示したことはありません。

 

良い点は自分のしたい表現をできることだと思います。デパートや企画画廊、美術館などではその展覧会の趣旨があるので、その枠をはみ出す表現や、展示方法は難しいと思います。

 

悪い点としては集客を自分ですべてしなければならないことです。

企画画廊やデパートではお客様がいらっしゃいますので、もちろん作家も努力は必要ですが、一人でやるのとは全然効果が違います。

 

お客様が作品を購入した時の対応などは貸し画廊ごとに全然違います。常に貸し画廊のスタッフが在中している場所もあれば、レジも作家が借りて会計も作家が対応する場所もあるようです。大学の頃、友人がレジを借りていたというのを聞きました。

 

また、レンタルするときにレンタル料を払うのですが、それに加えお客様が何かを購入した場合はマージンを取るという場所もあるようです。なので貸し画廊もそこを経営する人によってサポートや契約内容がてんでばらばらなんじゃないのかなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

半企画画廊

 

画廊内のスペースを分けていたり、同じスペースでも展覧会によって違っていたり様々ですが、場所を作家にレンタルすることもあれば、経営者が企画して展覧会を開催する場合もある画廊です。

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂敷画商

 

初めて聞くと、風呂敷画商とは何ぞや?と思いますが、自前の画廊を持たずに自宅や直接お客様の自宅に行って売り買いするスタイルのことです。

 

おそらく商品を風呂敷に包んで持ち運びしていたためこのような名前になったのではないかと思われます。

 

 

 

 

今はネットが盛んですし、直接見聞きしたことはありませんが、もしかしたら通信販売系の新しい形の商売をしている画商さんもいるかもしれません。

 

 

 

 

今日はここまで。

次回に続きます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

akashiaya.jimdofree.com