リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

日本の美術業界のいろは②ー芸術作品の価格設定ー

今日も生きてます。

 

涼しくなってきましたね。

 

蝉の声も鈴虫の声もいつの間にか聞こえなくなってしまいました。

 

夏好きな私としては少し切ないですが、今度は芸術の秋ともいわれる季節。

 

私が何よりも大きな声で鳴くしかないっ!!(???

 

そして秋といえば何より食欲の秋です。

美味しいものをたくさん食べたいですね。

 

 

さて、今日も「銀座の画廊経営」銀座柳画廊 副社長野呂洋子さん著株式会社ファーストプレス発行を読んでいます。

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「銀座の画廊経営」

銀座柳画廊 副社長野呂洋子さん著

株式会社ファーストプレス発行

 

 

前回は画廊の種類について取り上げました。

日本の美術業界のいろは①ー画廊の種類ー - リアル絵描き日記

 

 

本の中では銀座で柳画廊を経営されている野呂洋子さんが、画廊を経営されている立場から、美術業界のことを詳しく説明されています。

 

今日は「銀座の画廊経営」の中で野呂洋子さんが書かれている芸術作品の値段について個人的な体験談も含めつつ取り上げます。

 

そもそも芸術作品の値段はどう決まっているかって謎ですよね。

 

百貨店で芸術作品を取り扱っている売り場に行って作品を見ると、高額すぎて震えます。かと思えば翌週の違う展覧会では思ったより手頃な値段で同じようなサイズの作品が取り扱われていることもあります。

 

人によって感覚が違うので、定価がよくわからない美術作品のことを怖いと思われる方もいるかと思います。一時期デート商法で高額絵画を買わせる詐欺も話題になりましたからね。わからないからこそのなんでも鑑定団です。

 

 

私も芸術品の相場がわかるわけではありませんが、私自身はキャンバスのサイズや、その作品に使用した画材、その作品にあわせた額縁などを考慮して値段を付けます。

 

また、その作品を出品するために地方に出張する必要がある場合や、お店で著しく値引きされる可能性がある場合は少し値上げも検討します。

(検討するだけで実行されることはあまりない。)

 

その展覧会会場のお店の方や、画商さんから意見があれば反映します。

 

たぶん今生きていて作品を売買している作家が値段を決める立場にある場合同じようなものだと思います。

 

 

 

 

「銀座の画廊経営」の中から

絵画の値段は一概には言えないが、現存する絵描きの場合は号数が大きくなるほど単価が高くなる。

 

絵描きがいいと思う作品

画商が売れると思う作品

お客様がいいと思う作品

 

が一致するとは限らないため、サイズを基準に値段を設定している。

 

とありました。

 

ここで面白いのは今を生きる作家の新作は評価が定まってないため、みんなが納得できる金額設定を作品内容からは共有できないということです。

 

辛さやにおいの強さを図る機械はあるけれど、作品の美しさやすばらしさをはかれるものは地球にはありません。もし作品の良しあしを完全に数値化できる機械ができたら鑑定士の仕事は激減しますね。

 

さて、ここまでは現存する作家の作品を見てきましたが、亡くなってしまい、もう評価が定まっている作家の作品はどうなのでしょうか?

 

 

 

 

「銀座の画廊経営」の中から

 

物故作家の場合は作品のサイズではなく、内容で値段が変わる。

大体の相場はあるが、オークションや交換会を参考にして値段を決める。

 

 

オークションとは

 

サザビーズやクリスティーズが有名で、カタログが作られてほしい人が購入金額を掲示しあい、最も高い金額を出した希望者が購入できる。

オークション側は買い手から約20パーセント、売り手から約10パーセントの手数料と、カタログ掲載料や運送費などが収益になる。

 

 

 

交換会

 

月に一度開催される登録された業者(画商)のみが参加できるオークション。

目的はお客様に売るための仕入れであるため、値段が競り上がることなく相場で取引される。(交換会から交換会へ作品を転がして利益を出す「ハタシ」と呼ばれる人もいる。)

 

ある程度の値段になったら買いたい人同士がくじで決め、競り落とした人は買えなかった人にいくらか「利だし」を払う場合もある。

 

 

つまり業者の間で物故作家の作品の相場は共有されているようです。

 

しかし一般の人が相場を知るにはいろいろなオークションの結果を知ったり、各お店で同じ作家の作品の値段を比べてみたりして相場を知る必要がありますね。

 

画商さんも常に世界の美術品の相場の動きを追う必要があるようです。

 

難しい世界ですね。

 

作品の相場を計れる機械が開発されるまで、何でも鑑定団は必要なのです。

そういうアプリとかないんですかね?

 

 

 本の中で美術品の盗難について触れられていた箇所が興味深かったです。

 

 

 

 

「銀座の画廊経営」の中から

 

美術館から有名な絵画が盗まれた場合、水面下では窃盗団が保険会社に交渉を持ち掛ける。

 

美術品には動産保険がかけられているため、保険会社は保険金を支払う必要がある。

 

窃盗団は支払う保険金より低い額を提示し、保険会社は損失するお金が少なく、美術品が戻ってくるため交渉を受諾する。

 

以前からそのようなニュースを聞いたときに不思議に思っていたのです。1点物の絵画を盗んでもすぐ足がつくのではないかと。

 

でも水面下ではこのようなやり取りが行われていたんですね。もしかして知らないの私だけで常識なのかな?

 

次回に続きます。

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

akashiaya.jimdofree.com