ヴォルト・サント
今日も生きてます。
昨日ミラクルエッシャー展を見たことをブログに書きましたが、実は都美館で(東京都美術館のことを都美館と略すのは美術系だけでしょうか?)プーシキン美術館展もみてきました。
風景画の歩みがわかる展示で、フランスの風景が描かれた作品がたくさんあり、異国情緒気分(?)を味わえました。
以前ブログでグランドツアーというものがあったということを取り上げたと思います。(17世紀~18世紀頃のイギリスの貴族の若者が国外の文化や政治を勉強するためにした修学旅行のようなものです。)
プーシキン美術館展示ではそのときに貴族がお土産として買ったであろうと絵も展示されていました。
そして、出品されたものの中にはこの展示のために修復をしたという作品もあり、キャプションには修復をすることでより美しくなった画面を見てください(というような)ことかかいてありました。
どうしても年月が経つと画面は変化してしまいます。修復をすることで描かれた当初の姿を見れることは鑑賞者にとっては嬉しいものです。
そして今日はその修復に関する話です。
ヴォルト・サント⇒聖なる顔という意味で、イタリアの都市ルッカのサン・マルティーノ大聖堂にある木像のことです。
これも修復が行われた作品です。
修復前
修復後
装飾は後世に加えられたものとして取り外されました。
この作品にはキリストの磔刑に立ち会った本人が彫ったという伝説があります。
後にルーにとルッカという二つの都市の間で所有権が争われ十字架をのせた牛がどちらへ進むかでそれが決められました。
その事を描いた壁画の作品が16世紀初頭にありました。
木像は修復前と同じ派手な装飾品をつけていますね。
飾りがない当初の姿より、装飾をつけていた姿で長い年月過ごしてきたことがわかります。
修復の基本書「修復の理論」の中で著者のチェーザレ・ブランディは同作品の歴史的重要性は、持ち物や装飾品によってこそ長い間裏付けられていたため、それらを撤去することで歴史的推移すべてをキャンセルしリセットをかけるような行為には正当性を見出だせないと主張しています。
こうした論争を受けて装飾つきの姿で展示されていたときもあったそうですが、今は装飾品をなくした姿で展示されています。
難しい問題ですよね。いったいどのような保管・展示方法がいいのか…個人的趣味では装飾ついてた方が好きですが、そういうことじゃないもんな。
何が伝統で何が作品で、何を引き継ぐべきなのかとか、考えさせられる問題です。
物を作ってる方にはない視点でした。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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