悪魔のリンチに耐える老人の絵画?西洋版百鬼夜行「聖アントニウスの誘惑」の解説②
今日も生きてます。
マルティン・ショーンガウアー画「Temptation of St Anthony」
前回は聖アントニウスの誘惑について取り上げました。
西洋絵画でたまに発見する題名「聖アントニウスの誘惑」は、聖人アントニウスが苦行中に悪魔に誘惑されたことを描いたものです。
アントニウスが行った苦行は4回。
前回のブログでは、第一の苦行の中で受けた悪魔からのハニートラップについて取り上げました。
今日はその後のアントニウスの苦行と、それについて描いた作品を見ていきます。
第二の苦行 悪魔のリンチ
ボス(?)画「 The Temptation of Saint Anthony 」
出典:http://httpscommons.wikimedia.orgwikiFileThe_Temptation_of_St_Anthony_(Bosch).jpguselang=ja
村から離れたところの地下墓地で第二の苦行生活をはじめたアントニウス。
そこでまた悪魔の一群が彼に襲いかかります。ある悪魔は猛獣に姿を変えてアントニウスに掴みかかります。満身創痍のアントニウスは、地面にたおれてしまいました。
そんなアントニウスが天を仰ぐと、明るい一条の光が射し混み、光は悪魔たちを残らず追い散らしました。この光は神の救いの手だったのです。
ティントレット画「聖アントニウスの誘惑」
出典:File:Jacopo Tintoretto - The Temptation of St Anthony - WGA22617.jpg - Wikimedia Commons
アントニウスは、なぜ悪魔が襲い始めてきたときに来てくれなかったのか?と問いかけます。
そうするとどこからか聞こえる声は、お前が果敢に戦う様子を見てみたかった。がんばってたね。これからはいつでも助けるからね!他の皆にも君のこと知らせるからね!、という旨のことを話します。
(神様ってたまにSっ気出して信者の信仰心試しますよね。)
悪魔に襲われるアントニウスを描いた絵画たちをみてみよう
悪魔を直接見た画家は(たぶん)いないため、画家の想像力が発揮される画題です。
それぞれの画家たちが思い思いの悪魔を描いています。
襲われるアントニウスはかわいそうですが、このテーマは個性的な悪魔たちを楽しむ絵画でもあります。
この画家にとっての悪魔とは…?と思いながら絵画を見比べてみるとより楽しめるかもしれません。ということで、見ていきましょう!
ヒエロニムス・ボス画「Temptation of Saint Anthony 」
ボスの「聖アントニウスの誘惑」の祭壇画の中には左上の方に悪魔たちに襲われる聖アントニウスが描かれています。
空まで連れられて木の棒やトンカチのようなもので暴力を受けています。
くちばしが長いので鳥寄りの悪魔ですね。
出典:File:Brueghel the Younger Temptation of St. Anthony.jpg - Wikimedia Commons
下の方に小人サイズの悪魔たちが聖アントニウスを取り囲んでいます。
他の筋肉マッチョな悪魔たちと比べると、コロコロしていてどことなくかわいいと感じるのは私だけでしょうか。
絵本的な世界観ですね。
ルーカス・クラナッハ画「The Temptation of St. Anthony」
出典:File:The Temptation of St. Anthony MET DP842889.jpg - Wikimedia Commons
画面上部に悪魔にリンチされてる聖アントニウスがいるのですが、わかりますでしょうか?
おやじ狩りのようにも感じます。こんな目に遭って、神様から「君の信仰心試した」的なこと言われたら、私だったら逆恨みしちゃいそうです。
パオロ・ヴェロネーゼ画「Temptation of St Anthony」
出典:File:The Temptation of St. Anthony MET DP842889.jpg - Wikimedia Commons
イケメンマッチョの悪魔に暴力されている聖アントニウスですね。傍らには美女も控えています。
悪魔を人間として表現している作品は意外に少ないかも。
本当に怖い(悪魔)のは人間的なもっと深いメッセージがあるのでしょうか。
ヨースト・ファン・カースベーク画「Temptation of St Anthony」
口を開いた男性は聖アントニウス?
ボスの絵画も彷彿とさせる画風と発想です。
マティアス・グリューネヴァルト画「The Temptation of St. Anthony」
出典:File:Matthias Grünewald - The Temptation of St Anthony - WGA10765.jpg - Wikimedia Commons
この作品は異形の怪物がたくさん描かれています。
髪の毛も引っ張られて聖アントニウスもかわいそうです。
個人的には左下端のペストにかかった悪魔?が怖いです。
見るからに感染症まみれ風の悪魔に近寄られたら…想像したくないです。
第三の苦行
アントニウス悪魔にリンチされた後、地下墓地で35歳まで過ごしていました。
ある日神様にもっと奉仕したいという思いが生まれてたアントニウスは、地下墓地を出ます。そこで無人の荒れた砦を発見して、そこを第三の苦行の地にしました。その後、砦の扉を閉めきったまま、およそ20年間厳しい修行を続けます。
20年間、アントニウスは一度もそこから外にでずに、誰とも会いません。
砦の近くには、アントニウスに会いたい人々が押しかけていました。彼はそうした人々を前にして説教をします。
いつしかピスピルの山には修道院が建ち並び、砂漠は修道僧でいっぱいになります。
アントニウスはこうして「修道院の創設者」あるいは「修道士の父」となりました。
第四の苦行
Master of St. Veronica画「Saint Anthony Abbot Blessing the Animals, the Poor, and the Sick」
60歳を越えたアントニウスは、第四の苦行の地としてコルズム山に向かいます。
コルズム山のアントニウスは奇跡を起こしました。なんとアントニウスは丹毒やペストなどの病気を治したのです。
それから約40年間、死去する105歳まで、修道士の教育、奇跡(病気の治療)の日々を送りました。
そして、神から自分の死が近いことを知らされたアントニウスは、弟子を呼び出し、自分はもうすぐ死ぬということ、埋葬のことなどについて話しました。
アントニウスが死ぬと、弟子の二人は言いつけに従って、彼の死体を誰にもわからないところに埋葬しました。
死後およそ200年たった西暦561年にその墓が発見されたそうです。
西洋美術版の百鬼夜行「聖アントニウスの誘惑」いかがでしたか?
聖アントニウスの人生と苦行を少し知ると、誘惑されているのは最初の一回目の苦行の時だけなのかなー?と思います。(前回のブログで取り上げた部分です)
もっと深堀するとさらにたくさん誘惑されているのかもしれませんね。
実際に見たことがない生き物などを描いた作品は面白いですね。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。