鵺は基本的に気持ちが悪いだけ。
今日も生きてます。
空想の生物を紹介するシリーズが続いています。
個人的には、現実にあるものをそっくりに描いた作品よりも、この世にないものを作者が想像力と表現力を駆使して描いた作品の方が楽しく鑑賞できます。
空想の存在でも、モチーフとして描かれる場合、何かの場面が描かれていたり、背景があったりします。
画題を知ることは楽しい作品鑑賞につながりますね。
今日は霊獣の中から「鵺(ぬえ)」を取り上げます。
最初はただの不気味な鳥だった。
(Toriyama Sekien (鳥山石燕, Japanese, *1712, †1788) - scanned from ISBN 4-3360-3386-2., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3701925による)より引用
鳥山石燕画「今昔画図続百鬼」より鵺
しかし↑の鳥山石燕が描いているような姿ではなく、夜になく不気味な鳥として描写されています。
今日では、昔「鵺」と呼ばれていたものは「トラツグミ」であるとされています。
(Ohsaka - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27435597による)より引用
夜に不気味な声で鳴く鳥とされていたようなので、YouTubeでトラツグミの鳴き声を聞いてみましたが、個人的には全く不気味とは感じませんでした。
やはり昔の日本人と現代の私とは感覚違うのかなあ?
皆さんも時間がありましたらトラツグミの鳴き声きいてみてください。
この鳴き声から、平安時代の貴族は鵺(トラツグミ)のこと不吉な鳥と捉え、恐れていました。
「平家物語」から正体不明の怪物にパワーアップ!
(パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=314867)より引用
鵺で一番有名な話は「平家物語」の中で語られる源頼政の鵺退治のエピソードです。
ざっくりあらすじを示すと…
天皇の御所である清涼殿で、夜ごと不気味な声が響きます。
それを恐れた天皇は病にかかってしまいます。
そこで弓の達人源頼政に怪物退治の命が下されます。
その後、頼政は見事に怪物を射落とします。
Tsukioka Yoshitoshi (Japan, 1839-1892) - Image: http://collections.lacma.org/sites/default/files/remote_images/piction/ma-34133547-O3.jpgGallery: http://collections.lacma.org/node/191344 archive copy at the Wayback Machine (archived on 22 January 2019), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27340910による
月岡芳年画「新形三十六怪撰:猪早太と鵺」
もともとは、鵺のように鳴く正体不明の生物が、
顔 猿
胴体 狸
手足 虎
尾 蛇
が組み合わさった怪物の姿になりました。
浮世絵として描かれる鵺は大体がこの源頼政の鵺退治の話だと思います。
高嵩谷画「源三位頼政鵺退治」
絵馬に描かれた作品。
歌川国芳「鵺退治」
源頼政の矢が鵺に当たり、もだえ苦しんでいます。
退治した鵺は祟りを恐れて鴨川に流されました。
流れ着いた先で手厚く葬られたそうです。鵺を葬ったとされる鵺塚も残っています。
歌川国芳「木曾街道六十九次之内 京都 鵺 大尾」
↑は鵺退治の絵ではありません。
これは歌川国芳が木曽街道の宿場にちなんだ物語を、語呂合わせを用いながらも描いたシリーズです。
鵺の特徴的な尾と、「大尾」をかけています。
火消しの衣装に鵺がデザインされたものもありました。
鵺のイメージが共有されていたことがわかります。
ここまでまとめてきて思ったことは、
最終的に鵺…なんか悪いことしてる…?
鵺はたぶん気持ち悪い鳴き声に気持ち悪い外見がつくられただけですね。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。