リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

トビアスの冒険②

今日も生きています。

 

乾燥は女子の大敵であることを認識しました。パックだパック。

 

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さて、昨日は旧約聖書外典にあるトビト書のあらすじを書きました。

ざっくりいうと父親が貸したお金を息子が取りに行き、その案内を天使がしてくれるという内容です。

 

ちなみに上の作品の少年はレオナルドダヴィンチがモデルになっているそうです。老いた自画像が有名ですが、美少年だったんですね。

 

今日はなぜこのテーマがルネサンスに好まれたのかという話です。

 

それは銀行業が旧約聖書で禁じられていたことが関係します。

 

「異邦人には利子を付けて貸し付けてもよいが、あなたの兄弟に貸すときには利子を取ってはならない」(「申命記23章20」)

「その人に金や食糧を貸す場合、利子や利息を取ってはならない」(「レビ記25章37」)

 

外国人にはお金を利子をつけて貸してもいいとなっていますね。そこで両替商というものが出てきました。

 

まず両替商は他国に支店をつくります。

 

お金を借りたお客様が、借りたお店ではなく、他国の支店に代理人に利子と一緒にお金を返します。

 

こうすることで聖書の禁じられた条項をかいくぐりました。

 

同じ銀行の中でのことになるので実際にやり取りするのは証文だけで、金額の移動は帳簿上のみ、お客様は銀行の指示に従い、現金を渡せば済むだけです。

 

両替商は大変繁盛しました。

 

 

しかし時には手書きの証文や決済のための現金を異国の支店まで運んでいかなければいけません。大金を運んでいる途中に魔が差して社員が逃げてしまう可能性もあります。

 

 

最終的に重要なやり取りには家族や親せきに行かせることになりました。

 

当時の旅は危険なものだったそうです。大金を持たせた息子が無事に帰還することを願った人々にとって、トビアスの話はあやかりたいストーリーでした。

 

なので両替商が繁盛した地域でこのテーマの絵が好まれたんですね。

 

f:id:akashiaya:20180330091855j:plain帰還したトビアスが父の目を治す場面

ベルナルド・ストロッツィ「盲目の父の目を癒すトビアス

 

 

今日はここまで。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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〇展示があります〇

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山本冬彦推薦作家による 2018自画像展

 

【会場】Gallry ARK

【会期】4月12日ー4月21日 日曜休廊

【時間】午前11時ー午後6時 最終日は午後5時閉場

 

オープニングパーティーが4月14日の15時から始まります。

出品している作家さんやコレクターとして有名な山本冬彦さんが出席します。

私も参加する予定ですのでぜひお越しくださいませ。

 

DMが何枚かあります!先着になってしまいますが、欲しいという方は私のWEBSITEのコンタクトからメール、またはFacebookからメッセージをください。

CONTACT - 明石 恵 Aya Akashi website

 

〇大阪にも行きます〇

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トビアスの冒険

今日も生きてます。

 

春が来た気持ちでいっぱいでございます。

 

 

今日は下の作品です。

 

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道を天使と少年が歩いています。

旧約聖書外典にある「トビト書」に書かれている話をモチーフにしています。

 

このような絵がルネサンス時代にフィレンツェシエナ(当時の金融の中心地)で好まれて描かれていました。

 

それはなぜなのかというお話です。

 

 

 

 

 

まずはトビト書のどんな場面が描かれているかあらすじです。

アッシリア捕囚として連れていかれたトビトとその息子トビアスを中心とした物語です。

 

善行を積んでいたトビトは王が殺したユダヤ人の死体をこっそり埋葬した罪でお尋ね者になりましたが、王の死後にトビトのおいアキアカロスが大臣に就任して家に帰ることができました。

 

その後トビトは穢れを嫌い庭で寝ていると目にスズメの糞が落ちてきて失明します。また再開した妻のアンナがもらった贈り物を盗んだものと疑ってしまいます。

 

 失明した挙句些細なことで妻を疑ってしまったトビトは死を願います。

同じころ、サラという女が神に自らを殺せと祈りました。彼女は七回結婚して七回とも夫が初夜に悪魔に殺されたのです。(なんてこったい)

 

 トビトは息子トビアスに主の道をさとし、ラゲスにいるガバエルにお金を預けておいたことを明かします。そして天使ラファエルがその身分を隠してトビアスの案内人として雇われ、トビアスはラゲスへの旅に出ます。

 

旅の途中、案内人であるラファエルのアドバイスをもとにトビアスはテグリス川で大きな魚を釣り上げました。ラファエルは魚の胆汁を父の眼病の薬にせよと言いました。

そしてラグエルの娘サラと結婚し、悪魔退散のために心臓と肝臓を使えと言いました。

 

ラグエルはトビアスを気に入り彼女をトビアスの妻として差し出します。

トビヤがラファエルの教えたとおりにすると、悪魔は出て行き、二人は無事に夜を明かし、一同は神をたたえました。

 

ラファエルはトビアスのかわりにガバエルを訪れ、彼を婚宴につれてきます。その後トビアス夫妻は両親のところへ旅立ちます。

 

ビアスはトビトのところに戻り、ラファエルの教えどおりに胆汁で目を治しました。そしてラファエルは素性を明かし、皆は神をたたえました。

 

 

 

 

絵に描かれているのはラファエルとトビアスが旅をしている風景です。

 

 

 

今日はここまで。

明日に続きます。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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展示があります!

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家族の肖像

今日も生きています。

 

桜が咲いてますね。

いつのまにか春です。驚きです。

 

 

今日は展示のお知らせです。

 

 

大坂の阪神でおこなわれる「家族の肖像展」に出品します。

 

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画像ががびがびしてるかな?

 

 

DMが完成するといよいよという気持ちになりますね。

私は全日終日在廊する予定です。

お近くの方はぜひお越しくださいませ。

 

大阪に行くの楽しみです。

たこ焼きとかお好み焼きとか道頓堀のうどんとか食べたいな。

 

 

 

今日は簡単ですがここまで。

今日もご覧くださりありがとうございました。

 

聖セバスティアヌス④

今日も生きてます。

 

 

聖セバスティアヌス最終回です。

 

そもそもなぜ殉教されるような場面で痛そうな表情をせずにうっとりとした表情をしているのでしょうか。 

 

 

キリスト教徒にとっては殉教するということは天国に行くということです。なので苦痛に歪む表情より法悦状態で天を見上げる表情で描かれました。もちろん画家が発注した人間の趣向に合わせる場合もあります。

 

 

バスティアヌスの作品だけではなく、キリスト教の芸術作品の中にはうっとりした表情が描かれているものを見受けられます。

 

ベルニーニ「聖テレジアの法悦」

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カラヴァッジョ「法悦のマグダラのマリア

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法悦という言葉がわからなかったのですが↓

ほう えつ ほふ- [0] 【法悦】

仏法を聞いたり信仰したりすることにより心に喜び感ずること。法喜
うっとりするような深い喜び陶酔。 「 -にひたる」

 

 幸せ状態ですな。

 

 

ちなみに聖セバスティアヌスは三島由紀夫の著作「仮面の告白」の中で登場人物が性に目覚めるシーンで出てくるそうです。また三島由紀夫自身が聖セバスティアヌスに扮して撮らせた写真もあります。載せられませんが探すと出てくるので気になる方はどうぞ。

そしてマンティーニ作「聖セバスティアヌス」と同じポーズを撮った自分の等身大のブロンズ像をつくらせていたそうです。闇を感じますね。

 

今度からセバスチャンという名前の登場人物に会ったら色眼鏡で見てしまいそうです。

 

 

 

今日はここまで。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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聖セバスティアヌス③

今日も生きています。

 

 寒いですね。心を燃やすしかない。

ところで雪化粧した家々って粉砂糖がかかっているようで美味しそうですね。

 

 

さて、聖セバスティアヌスの絵について池上英洋さん著書西洋美術史入門より見てきました。今調べたら西洋美術史入門・実践編も出版されているそうです。今の本読み終えたら買ってみようかな。

 

 

今日は本の内容ではないですが、聖セバスティアヌス続編です。

 

 

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グレイド・レーニ「聖セバスチャンの殉教」

 

14世紀ヨーロッパで流行したペストに対する恐怖から願掛けとしてたくさん描かれた聖セバスチャンの殉教の図ですが、19世紀末には同性愛の守護聖人になっていきます。

 

上のグレイドレーニの描いた聖セバスチャンの殉教、どう見ても官能的ですよね。

 

ただ実際聖セバスティアヌスが殉教した時は高齢で、もともと中世辺りまでは聖セバスチャンの殉教の図はひげをたたえた軍人のおじさんの姿で描かれていたそうです。

 

それがルネサンスの頃になるだんだん美青年の姿として描かれるようになりました。16世紀後半、ヴァザーリという人が書いた書物の中にはーフラ・バルトロメオという画家が描いた聖セバスチャンの絵の前で女性の信者が集まり大騒ぎしたため、教会から絵が撤去されるという事件があったことが記されています。

 

 

その頃から聖セバスチャンをエロチックに描いてはいけないというお触れが出たそうです。(女性の官能的な作品はたくさんありますけどね…)

 

 

矢で射られている場面ではなくて、聖イレーネに介抱されている場面の絵があるのはこのお触れが出たためだと思われます。

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ですが17世紀になるとまた官能的な聖セバスティアヌスの絵が多くなっていきました。しかも矢が少なくなっていきます。需要があったとみていいでしょう。

 

 

 

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ピエトロ・ヴァンヌッチ(通称ペルジーニ)

 

 

 明日に続きます…

 

 

今日も最後までご覧いただきありがとうございました。

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聖セバスティアヌス②

今日も生きています。

 

池上英洋さん著「西洋美術史」を読んでいます。(教科書)

勉強になります。

 

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聖イレーヌに介抱される聖セバスティアン,ジョルジュ・ド・ラ・トゥール画。1645年頃

 

 

昨日は聖セバスティアヌスの殉教の場面について書きました。

 

他にも殉教した成人はたくさんいますが、14世紀後半からヨーロッパでセバスティアヌスの絵がたくさん描かれました。

 

それはなぜなの?というところが本の中に詳しく説明されていました。

 

14世紀ヨーロッパではペストが大流行しました。

ペスト菌が体に付着することから感染する病気です。治療しないと皮膚が黒いあざらだけになって死んでしまいます。

 

怖いです。

当時の人々はもっと怖かったんだろうなあ。特に患者になるにあたって理由が分からない点が恐怖を増幅しました。

 

キリスト教を信じる人々はこれを神の怒りと捉えたそうです。

一神教なので元をたどれば病も神が作り出したものです。

 

堕落した人間たちに無数の怒りの矢(=ペスト)を手あたり次第放っているのだと考えました。

 

 

ここで昨日まで見てきた聖セバスティアヌスです。

 

彼は無数の矢に射られても死にませんでした。

 

 

多くの人々にとって願掛けの対象になったそうです。

 

 

聖セバスティアヌスの絵がたくさん残っているのにはこのような理由があったようです。

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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聖セバスティアヌス①

今日も生きています。

 

今日は聖セバスティアヌス…またはセバスチャンの絵についてです。

 

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聖セバスティアヌス、マルコ・パルメッツァーノ

 

美術作品をよく見るという方は見慣れているかもしれませんが、美術に関心のない人がこんな人間の裸が描かれた作品みたら何を描いているの⁉となりますよね。

 

 

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聖セバスティアヌスの殉教、アンドレア・マンティーニャ画

 

 

 

誰が描かれているかというと聖セバスティアヌスというキリスト教の聖人が処刑される場面が描かれています。

 

他にもキリスト教の聖人はたくさんいるのですが、聖セバスティアヌステーマは他の作品よりも数多く描かれました。それがなぜなのか…というところをみていきたいなと思います。

 

いろいろな奇跡を起こしてキリスト教を布教していた聖セバスティアヌスですが、今日はよく描かれる殉教の様子を紹介します。

 

 

3世紀、ローマ帝国の皇帝であったディオクレティアヌスキリスト教を迫害していました。ローマはローマ神話多神教が多数派を占めており、皇帝も神の1人として君臨していたそうです。キリスト教一神教なので迫害の対象になりました。

 

 

 

 

聖セバスティアヌスはディオクレティアヌス皇帝の親衛隊長でした。ですがキリスト教を信仰していたことがわかり処刑されることになってしまいました。

 

 

 

 

その処刑方法は絵に描かれているようにハリネズミのようになるまで無数の矢が放たれました。

 

そして放置(!)されました。彼を埋葬しようとやってきた聖イレーネという女性は聖セバスティアヌスは死んでいないことに気づき、自宅で介抱しました。回復した聖セバスティアヌスはそこで盲目の少女の目を見えるようにするという奇跡を起こし、再びディオクレティアヌス皇帝の前に現れ熱弁をふるったそうです。ですがそのあと死ぬまで殴られ遺体は捨てられてしまいました。

 

 

 

描かれているのは聖セバスティアヌスが矢でいられている場面ですね。

 

明日はなぜたくさん描かれたかについて描きたいと思います。

今日はここまで。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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