三顧の礼から見立ての表現を知る
今日も生きてます。
見立て絵シリーズも最後です。
何枚か見立て絵の作品を見てきて、浮世絵の中での「見立て」の表現が何となくわかってきました。
現代の感覚だと、オマージュやメタファーの表現に近いのかなと思います。
今日は「三顧の礼」の見立て絵を見ていきます。
(Dai Jin - Zhongguo gu dai shu hua jian ding zu (中国古代书画鑑定组). 2000. Zhongguo hui hua quan ji (中国绘画全集). Zhongguo mei shu fen lei quan ji. Beijing: Wen wu chu ban she. Volume 10., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9489476による)
戴進(明の画家)による三顧の礼
三顧の礼については以前取り上げました。
故事成語として、「三顧の礼」は目上の人が格下の者の許に三度も出向いてお願いをすることを意味します。
もともとは後漢末期の184年に起こった大農民反乱:黄巾の乱で、一大軍勢を築いていた劉備が、格下でヤングの諸葛亮を軍師として口説くため、諸葛亮の家へ3度も訪れたことが由来となっています。
絵画として表現される場合は、家の前に訪れる三人の人間と、その三人と家の前で話す一人の人間、そして家の中の奥の方に一人人間が居る構図が多いです。
家に訪れる三人が劉備とその家臣
家の奥にいる人間がヤングの諸葛亮
家の前で三人を受け入れるのは子供です。
(諸葛亮のお手伝いさん的ポジションでしょうか。)
shizhao (talk)拍摄,画者不明 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10640439による
そして三顧の礼をテーマにした見立て絵を見ていきましょう。
勝川春扇「やつし玄徳雪中訪孔明」
三顧の礼の定番構図なのでわかりやすいですね。
訪れる三人が女性に置き換えられて表現しています。
歌川国貞「玄徳風雪訪孔明見立」
向かって一番右の女性は何か料理を運んでいます。
この作品では手前の三人が劉備たちを表現しています。
では小間使いっぽい子供と諸葛亮はどこ?と家の中を覗いてみると
縮尺が少し納得いきませんが、中で食事をしていると思しき女性と子供がちっちゃく描かれています。
ここが小間使いっぽい子供と諸葛亮を表しているのでしょう。
日常の風景がテーマでも、見立ての表現を使用することで鑑賞者に謎解き(?)的な楽しさを提供しているのが嬉しいですね。
ちなみにこの作品の中の家(おそらく料亭っぽい)の看板に「雅流光」とありますが、これは諸葛亮が住んでいた家の名前「臥龍岡」に対応していると思われます。
浮世絵は下絵を考える人と実際の作り手が作業分担されていたこともあってか、細やかなモチーフまで由来が考えられていますね。
鈴木春信の見立て絵の作品を知ってから見立てがよくわからないなあと思っていましたが、だんだん理解してきました。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。