リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

一足先に幽霊画でひんやりしよう!

今日も生きてます。

 

 

風が強いですね。

 

外を歩いていると風になされるままの髪の毛が広がり、メデューサのようになっていました。

 

 

さて、今日はこの本を読んでいました。

 

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2018年に平凡社から出版された「幽霊画と冥界 」(別冊太陽 日本のこころ)です。

(写真はおどろおどろしく加工しています。)

 

幽霊画や冥界が描かれた日本画を紹介している内容です。

 

 

 

 

 

ホラー映画やお化け屋敷は苦手ですが、なぜか怖い絵や怪談好きなんですよね。

 

気に入った幽霊画を記録も含めて紹介したいと思います。

 

 

 

 

 〇円山応挙「返魂香之図」

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まず幽霊画といえばこの道で一番有名であろう円山応挙「返魂香之図」(はんごんこうのず)です。

 

 

ちなみに以前ブログで取り上げました。

akashiaya.hatenadiary.jp

 

前のブログの内容と被りますが、

 

足のない幽霊を初めて描いたのは円山応挙であるという

 

円山応挙幽霊伝説」(勝手に命名)があります。

 

有名な話で、美術に興味が無くても、オカルトや落語好きなら知っている方も多いと思います。

Wikipediaによると、足のない幽霊を描いた挿絵が円山応挙以前にも確認できるという説もあるようです。

 

上の幽霊の絵は青森県の久渡寺(くどじ)に所蔵されています。毎年旧暦の5月18日に一時間だけ公開されているそうです。

 

この絵は、幽霊を見たことがなく描けなかった応挙の前に、自ら命を絶って現れた応挙の妻を描いたものと言われています。

 

旧暦の5月18日は応挙の妻の命日で、供養のためにこの日に公開されているそうです。

 

 

ちなみにこの絵の題名の中にある「返魂香」(はんごんこう)は中国の故事にもとづくもので、焚くと煙の中に死者の姿が現れるお香のことです。

 

 

個人的には怖いというよりセクシーな色気を感じます。(うふーん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇鰭崎英朋「蚊帳の前の幽霊」

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色っぽい幽霊画としてはこちらの作品も素敵でした。

 

鰭崎英朋(ひれざきえいほう)の「蚊帳の前の幽霊」です。

 

正直題名が幽霊でなければ雰囲気のある美人画だと思ってしまいます。

 

美人画としても儚く怪しくセクシーで魅力的な一枚ですね。

 

落語の「野ざらし」に出てくる女性の幽霊はこんなイメージです。

 

 

 

 

 

 

 

〇矢野雍斎「幽霊画」

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↑は矢野雍斎(やのようさい)の「幽霊図」です。

 

美人画のような幽霊画ではなく、異形の雰囲気を持つ幽霊が、こちらに向かって歩いてきています。

 

一見浮遊しているように見える幽霊ですが、後ろには足跡が…

 

足はあるのか無いのか?不思議な作品です。

 

 

 

 

山川秀峰津軽の雪女」

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こんなかわいらしくて可憐な幽霊であったらみてみたいと思うような雪女です。

 

山川秀峰の「津軽の雪女」という作品です。

 

作者は美人画を得意とした近代の画家です。

 

乱れた髪の毛の雪女ではなく、高級遊女の姿で雪女を表現しています。京都生まれの作家ですが、なぜ津軽なんでしょうか?

 

 

 

 

 

〇松本楓湖「盲人幽霊」

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今までは女性の幽霊ですが、こちらは男性の幽霊画です。

幽霊画は女性の方が多いようです。

 

作者の松本楓湖は歴史画を得意としていて、明治から大正にかけて活躍しました。

 

絵の中で画面手前に緒の切れた草鞋の一部が見えます。これは盲人が旅の途中で亡くなったことを示しているそうです。

 

個人的にはいろんな表現が一枚に詰まっていて気になる作品です。

 

盲人の輪郭線は幽霊の割には比較的はっきり描かれています。しかし身体の濃淡は淡く、もう人間ならざる存在であることがわかります。

 

また手前の植物の表現にも注目しました。

 

草の表現がぼけていたりシャープであったり、また花部分は輪郭線はなく、あまり細かく描写しないことで幻想的な仕上がりです。

 

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菊池容斎「美女と幽霊」

 

 

さて、突然ですがクイズです。

↓の作品も幽霊画ですが、幽霊はどこにいますでしょうか?

(左下の女性ではありません。)

 

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すぐわかりますか?

 

私はなかなか見つけられませんでしたが、ここにいます。

 

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こういうものは不思議で、一回知るともうそれ以外にみえなくなりますよね。

 

 

 

これは菊池容斎の「美女と幽霊」です。

 

墨のにじみを生かした「たらし込み」の技法で松が描かれています。

 

幽霊はおどろおどろしいというよりもムーミン的な(鼻のせいか)精霊っぽいです。

 

 

 

 

 

 

 

河鍋暁斎「幽霊図」

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掛け軸の中から出てくるような幽霊図。

 

幽霊図を鑑賞していたらいつの間にか…というような場面を想像します。

 

このように掛け軸から幽霊が出てくる表現は、幽霊画の世界ではほかでもみられます。

 

貞子の起源をここに見つけたりですね。(きっとくる!)

 

 

 

 

 

 

円山応挙「幽霊図」

 

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円山応挙作と伝えられている作品。

 

これは妻を描いたものとはだいぶ趣が違います。

 

耳まで裂けた口と、吊り上がった目。

わたしは口裂け女をイメージしました。

 

なんというかいわゆる幽霊ポーズで幽霊らしい幽霊画です。

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恨めしや―の声が聞こえてきそうです。

 

 

 

 

 

 

 

〇川口月泉「幽霊画」

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もはや幽霊とか関係なくこわい顔です。(涙)

 

 

この形相で睨まれたら速攻謝罪&土下座してしまうかも。

 

川口月泉の父は盛岡藩の御用絵師です。

一族は盛岡の画壇で活躍しました。

上の作品も含め三幅の幽霊画を残しています。

 

 

盛岡市龍谷寺には「筆を加えた絵師の自画幽霊画」というおもしろい作品もあるようです。

 

 

なんか…実際に見えるタイプの方だったんでしょうか…(こ、こわい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日は冥界編です。

 

 

あまり風が強いと幽霊も吹き飛ばされてしまうのでは…?と、なぜかレジ袋が空を舞うイメージを思い浮かべながら考えてます。

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

akashiaya.jimdofree.com