リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

目覚めよ琳派(ゆうしゃ)たちー風神雷神図屏風を知るー

今日も生きてます。

 

あたたかいですね~。

それだけでしあわせだ~。

 

サクラの開花予想も平年よりも早めになるそうですね。

家の近くに桜があるので、散歩が楽しみです。

 

 

 

さて、今日も引き続き風神雷神図についてみてきます。

 

 

前回はおそらく日本で一番有名である俵屋宗達の風神と雷神についてそれぞれみましたが、今日はどんな流れで二柱がペアになっていったかを見ていきます。

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俵屋宗達風神雷神図屏風」↑

 

 

中国で1世紀に作られた名門武将のお墓には風伯雷公(風神雷神)が彫られていたり、北魏のお墓の天井画に星図を挟んだ雷公風伯が表現されていたりします。

 


日本で風神と雷神をペアで表現する起源は仏教美術である

 

千手観音二十八部衆像(せんじゅかんのんにじゅうはちぶしゅう)

千手観音曼荼羅(せんじゅかんのんまんだら)

 

の中で見られます。

 

二十八部衆とは、千手観音に仕える眷属(けんぞく=神の使者)のことです。

東西南北と上下に各四部、北東・東南・北西・西南に各一部ずつが配されており、合計で二十八となります。

 

風神雷神は仏教の中で千手観音の眷属というポジションです。

 

平安時代から鎌倉時代まで、中央の千手観音を本尊として周囲に二十八部衆を配置した構図が流行しました。

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千手観音二十八部衆細見美術館

↑の画像はKamakura-period author - http://www.emuseum.or.jp/HDNL/NL12-1.html, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44443968による

 

上の方に風神雷神がいます。

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上の画像は不明 - https://collections.mfa.org/objects/24422/senju-kannon-the-thousandarmed-bodhisattva-of-compassion, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=86297697による

千手観音二十八部衆ボストン美術館

 

上の方にいます。

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風神雷神は彫刻の作品もあります。

 

日本にある風神雷神像の中で一番古いものは、三十三間堂の木造風神・雷神像(鎌倉時代)です。

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↑の画像はK. Ogawa (photographer), Shimbi Shoin (publisher) - Selected Relics of Japanese Art, 20 Volume Set, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7839744による

 

 

浅草にもいらっしゃいます。

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上の画像はoimax - https://www.flickr.com/photos/oimax/163056795/, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1459673により引用

 

 

 

 

 

 

 

 

千手観音二十八部衆像の流行前に描かれた風神雷神もあります。

 

奈良時代の『絵因果経』降魔(醍醐寺蔵、国宝)

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『過去現在絵因果経』断簡 (松永本)

上の画像はBy This file was donated to Wikimedia Commons as part of a project by the Metropolitan Museum of Art. See the Image and Data Resources Open Access Policy, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57381099より引用

 

 

平安時代の『金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図』(中尊寺蔵、国宝)

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ここにいるのかなあ

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仏教の風神雷神図以外では、もともと日本の雷神信仰天神信仰(てんじんしんこう)」があります。

 

天神信仰」は、日本における天神(雷神)に対する信仰のことで、菅原道真を天神様として崇めます。

天神信仰を表現した絵には雷神が描かれています。

 

〇承久本(複写) 雷神 北野天満宮

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上の画像は不明 - http://journal.mycom.co.jp/news/2008/05/01/005/index.html, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15702911による

 

〇弘安本 雷神 北野天満宮

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上の画像は不明 - http://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl_img&size=L&colid=A227&t=, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15703027による

〇旧井上家本 風神 メトロポリタン美術館

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↑の画像https://www.metmuseum.org/art/collection/search/45428, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=79886366による

 

 

 

〇旧井上家本 雷神 メトロポリタン美術館

 

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↑の画像は匿名 - Metropolitan Museum of Art], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=28286050による

 

 

 

 

 

俵屋宗達風神雷神図以前に風神雷神の姿のイメージは決まっていたことがわかりますね。

 

 

 

俵屋宗達風神雷神

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国宝。2曲1双、紙本金地着色。建仁寺蔵(京都国立博物館に寄託)

 

この作品以外にも風神雷神を描いたものはたくさんあるのに、この作品の認知度の高さは驚きです。

 

極めて有名な絵ですが、江戸時代ではそんなに知られてなかったようで、この絵についての記録や文献はありません。

 

この屏風を注文したのは京都の豪商&歌人でもあった糸屋の主人です。

臨済宗建仁寺派寺院妙光寺(糸屋の菩提寺)再興の記念に妙光寺へ寄贈するために制作されました。

 

 

 

 

風神雷神図屏風の特徴

 

この屏風の批評でよく指摘されるポイント

 

〇構図
画面の両端ぎりぎりに配された風神・雷神が特徴です。画面全体の緊張感をもたらしています。(扇形の構図は扇絵を元にしていると言われています。)

 

三島由紀夫はこれを「奇抜な構図」と呼んだそうです。
(三島由紀夫さん、貴方の人生の方が個人的には奇抜や。)

 

〇雲の表現

たらし込みで描かれています。立体感のある雲の表現になっています。

 

 

〇墨

墨に銀泥を混ぜて使用し、柔らかく軽やかな雲の質感を描き表している。

 

 

 

個人的な感想としては、太鼓小さすぎなんじゃ…や、ちょいちょい君は何を持っているんや…など、鑑賞の邪魔になるもやっとポイントはあるものの、一度見た人の頭に残るキャッチ―な構図も大胆で好きです。

 

雲のたらし込みとのっぺりした日本画の表現の対比が金箔の上に気持ちよく描かれているなあと思います。

 

あとデッサン的には荒ぶっている身体的な表現も好きです。

一般の方はねじ曲がった足の表現をどう受け取るんでしょうか。

 

私は絵の上での表現なんだし、ちょっとおかしいほうがお得(!?)な気持ちになるかも。ふふふ。

 

 

 

 

 

 

〇目覚める琳派(ゆうしゃ)たち

 

日本の美術史の中の「琳派」は、とても面白い存在で、狩野派や長谷川派などとは全く違う成り立ちです。

 

 

琳派に分類される画家の有名どころは、俵屋宗達尾形光琳酒井抱一・鈴木其一です。

この4人のうち3人(俵屋宗達尾形光琳酒井抱一)は、生まれた年代はバラバラなので、直接会ったことはありません。

この4人の共通点は俵屋宗達風神雷神図屏風です。

 

というのも、有名な話ですが、尾形光琳酒井抱一、鈴木其一は俵屋宗達風神雷神図屏風に感銘し、模写を残しています。

 

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↑の画像は尾形光琳 (Ogata Korin, 1658 - 1716) - [1] at [2], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2162010による

風神雷神図(尾形光琳

 

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上の画像はSakai Hōitsu - Idemitsu Museum of Arts, Tokyo, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=62858482による

風神雷神図(酒井抱一

 

 

 

選ばれし琳派(琳派と書いて、ゆうしゃと読ませる)たちは、この屏風を見ると覚醒してしまうんですね。

 

もしかしたら私も琳派(ゆうしゃ)かもしれないので、ぜひ実物をみたいのですが、常設ではなさそうですね。

 

自分に美的感覚が少しでもあると思う方は、絶対一度俵屋宗達の「風神雷神図屏風」見るべきです。

覚醒しましょう。

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

akashiaya.jimdofree.com