六道絵とは?
今日も生きてます。
以前ブログで牧島如鳩を取り上げました。
西洋であれ、東洋であれ、何か一つの信仰を抱いている作家が、それぞれの教えに何を感じてそれを作品にしたり、シンプルに聖人や神をたたえる作品は納得できます。
ただ牧島如鳩は自身がキリスト教を信じていながら、絵の中で仏教の菩薩と、キリスト教のマリア様を融合しています。
というか細かいことを言うと、菩薩は確かに女性であるかのような優美な表現で描かれることが多いですが、生物学的には女性ではないのでは…?
とにかく牧島如鳩が描いた聖母子像(?)「慈母観音図」が面白い。
キリスト教絵画でよくある、マリア様が幼きイエスキリストを抱いている様子が描かれているテーマです。ラファエロの作品が有名かと思います。
牧島如鳩はこのモチーフをマリア様を菩薩風にして描いています。
ちゃんと乳房もついてます。
(あまり理想化されていないから、見てはいけないものをみた気持ちになるような乳首。ていうか菩薩の乳首?それとも悟り前の釈迦の乳首か?)
菩薩を油彩で生々しく表現していることにも驚きますが、なんで西洋風の赤ちゃん抱えてるん?(幼きキリスト)と、面白すぎる。
こういう作品をみると、私のイマジネーションってお粗末だなと感じます。
さて、前回に引き続き地獄です。
前回は仏教の中で地獄とはどのようなものかざっくり確認しました。
地獄とは、仏教の五戒を破ったものが転生する場所で、地獄は大きく分けると8つのエリアがあります。
等活地獄(とうかつじごく)
黒縄地獄(こくじょうじごく)
衆合地獄(しゅうごうじごく)
叫喚地獄(きょうかんじごく)
大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)
焦熱地獄(しょうねつじごく)
大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)
阿鼻地獄(あびじごく)
〇六道絵とは?
地獄が描かれた絵巻物は「六道絵(ろくどうえ)」と呼びます。
まず六道とは、仏教の言葉で、輪廻転生した後に生まれ変わる世界のことです。
六つの世界があります。
餓鬼道
人道
天道
この輪廻から解脱できない限り、この六道を永遠に廻ります。
この六道の様子を描いたもの、それが六道絵と呼びます。
地獄を描いた絵はこの六道絵のジャンルに入ります。
もともとは仏教の生まれた地であるインドから中国を渡って日本に来たそうです。
この六道絵が描かれた目的はざっくりというと仏教の布教のためです。
六道絵を見た人の嫌悪と恐怖の感情を引き起こし、六道の輪廻転生の苦しみから逃れ、極楽に往生するしかないと思わせました。
地獄絵がよく描かれたのは平安末期から鎌倉時代です。
なぜこのような不穏なテーマが好まれたのかというと、災害や飢饉が頻繁に起り、政変や争いが絶えなかったことなど、社会不安の背景があります。
また、社会不安の一つに「末法思想」というものがありました。
末法思想は、当時広く信じられていた釈迦の入滅後2000年で仏法が衰退し世が乱れるというものです。
ちょうど平安時代がそれにあたり、人々の心は不安と絶望のうちにありました。
〇現存する地獄草子
地獄草子で現存しているものは三巻です。
・東京国立博物館本(国宝)
「正法念処経」というお経に基づき、地獄のひとつ「叫喚地獄」に付属する16の別所が描かれています。
・奈良国立博物館本(国宝)
『起世経』のお経に基づき、十六小地獄が描かれています。
・旧益田家本甲巻
『仏名経』『宝達問答報応沙門経』『馬頭羅刹経』に基づいていると指摘されています。
絵巻物を見ているのは基本的に貴族です。
地獄絵巻で獄卒に罰されている人々の中に貴族はいません。庶民やお坊さんです。
貴族はこのような絵巻物を見ても、功徳を積んでいる自分は地獄に落ちないと思っていたのでしょう。
そういう人間ほど地獄を回ってほしいと願ってしまいます。
今日はここまで
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考
『マンガでわかる「日本絵画」の見かたー美術展がもっと愉しくなる!ー』(監修矢島新、イラスト唐木みゆ、誠文堂新光社