唐獅子ってなに?ーライオンと何が違うのかー
今日も生きてます。
狩野派で有名な一枚といえばこれです。
狩野永徳「唐獅子図屏風」
狩野永徳について
日本人なら知っておきたい狩野派の歴史ー天才永徳登場ー - リアル絵描き日記
この絵だけではなく、獅子が描かれた昔の絵を見て疑問でした。
獅子ってライオンだよね?
この絵に描かれてるの、ライオンじゃないよね?
(この体の模様はなんじゃい!)
今日はそんな疑問を解決すべく唐獅子(からじし)の画題について見ていきます。
まず、話は古代ペルシアのライオンから始まります。
古代ペルシアなどでライオンは聖獣とされていました。
ライオンは聖なるもの、王位、王家の血統、などの象徴で、夏の暑い季節の星座である獅子座は、占星術の中で太陽とも関連づけされていました。
そのライオンが文様化されるときに、ライオンの体には太陽の象徴でもあるロゼットが描かれていました。
ロゼットとは、中心から放射線状に広がる文様です。
よく見るような文様ですが、これは太陽を意味しているようです。
そしてライオンは中国で聖獣として伝わります。
邪気を払う魔除けの意味を持つようになります。
↑陶器に描かれた獅子
「赤絵獅子文瓶」明 東京国立博物館
また、中国には「玉取獅子」(たまとりじし)と呼ばれる文様があります。
↑
「玉取り獅子文食籠」根津美術館
「繍珠」と「獅子」が戯れる様子を文様化したものです。
「繍珠」とは、雌雄の獅子が戯れるうちに毛が玉になり、中から児獅子が生まれるとされたものです。
(この繍珠の正式な読み方がわかりません。どなたか知っていたら知らせてください。「しゅうじゅ」で、正しいのだろうか。)
このことから、玉取獅子は強い男子を得る吉祥文とされます。
さて、中国から経由で日本にも獅子が伝わります。
ライオンを見たことの無い日本人は獅子を中国風の架空の聖獣として受け入れ、円や渦が描かれた獅子文が生まれます。
唐獅子
毛卍文(けまんもん)
扇獅子
扇と獅子の文様で、唐獅子のたてがみだけで獅子を暗示している。
獅子と牡丹
「百獣の王」と「百花の王」を組み合わせた文様。
組み合わせのよいものを意味する慣用句でもあります。
ということで日本では体を巻き毛が特徴的な「唐獅子」像が描かれるようになりました。
この巻き毛には霊力があるとされています。
(巻き毛にまで霊力を宿す設定にしたのは微妙に謎ですね。)
仏教では悪を食べる守護獣と考えられ、仏像や寺社を守る獅子像は一対でおかれていました。
これが今神社の前にある狛犬に繋がります。
ちなみに竹内栖鳳がヨーロッパ旅行で見たライオンを描いた絵は↓
竹内栖鳳「虎・獅子図」1901年
竹内栖鳳については↓
唐獅子ではなく、現代の我々がイメージするライオンですね。
今日はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
明石 恵 Aya Akashi website - 明石 恵 Aya Akashi website
参考
「漫画でわかる日本絵画のテーマ」
(誠光堂新光社、監修矢嶋新)
「日本・中国の紋様事典」
(視覚デザイン研究所)