リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

最後の晩餐って何を食べてるんだろうか。

今日も生きてます。

 

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宮下規久郎さんが書いた「食べる西洋美術史ー最後の晩餐から読むー」を読んでいます。西洋の絵画に描かれた食べ物にクローズアップしている内容の本です。

 

いろいろな美術に関係する本を読んでいて思うのが、美術の歴史は教科書に載っている一つだけではなく、数ある美術作品の中からどこをつなげてみていくかで、いろいろな歴史や意味・価値を見いだすことができることです。新しいマイ美術史を作り出すことができるのです。

 

「食べる西洋美術史」の著者・宮下規久郎さんは、画家のカラヴァッチョの本をたくさん書いているイメージ。「食」という身近なテーマも書かれるのかと意外でしたが、中身は真面目に絵画の食べ物について書かれていて面白いです。ちょいちょい先生の個人的な食べ物に対する感想も在り、そこも良いアクセントになっていて楽しく読めました。

 

本中で最後の晩餐について描かれていたので、今日は最後の晩餐について書きたいと思います。

 

 

〇最後の晩餐はどのような会であったのか

 

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↑は有名なレオナルドダヴィンチの「最後の晩餐」。

 

そういえばキリストと弟子たちは、どうして晩餐を開いたのでしょうか。

 

キリストと弟子たちが集まった日は「過越祭」(すぎこしさい)

ユダヤ人のお祭りで、食事としては子羊とふくらし粉の入っていないパンを食べてお祝いする日だそうです。

 

聖書の中でキリストは「パンは私の体」「ワインは私の血」であるとして弟子に分けました。これ以降キリスト教ではパンとワインを食べるミサを執り行うようになります。最後の晩餐の絵はミサの起源の場面を描いたものでもあるそうです。そして西洋で食事=神聖なものという思想が生まれます。

 

 

 

 

 

〇いろいろな最後の晩餐で何を食べているかを見てみよう

 

 

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「最後の晩餐」ラヴェンナ・サンタポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂、6世紀初頭

 

↑は6世紀初頭に制作された壁画です。

こちらの最後の晩餐には、皿の上に大きな魚が二匹載っています。古代ローマの禁教時代、魚はイエスを表す暗号でした。ギリシア語で、「イエス・キリスト・神の・子・救いの主」の頭文字をとると魚を意味する単語になるのが由来です。

 

 

 

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「最後の晩餐」ローマ・サンタンジェロ・インフェルミス聖堂、11世紀後半

こちらの最後の晩餐には、テーブルの上に大きな鳥料理が!

その料理に一人だけが手を伸ばしています。この人は裏切り者のユダであることを表しています。

 

キリスト教には断食する期間があり、その期間中肉を食べてはいけませんが、魚は食べても良いそうです。ここから魚は精進料理的な地位になります。そしてそんな魚に対して、肉=悪というような捉え方も生まれます。

 

なのでこの作品では、裏切り者のユダは肉料理に手を伸ばしているのでしょう。

 

 

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「最後の晩餐」ローマ、ヴォルゲーゼ美術館、1542年。

 

↑の最後の晩餐の作品では、お皿に羊の頭が乗っています。お皿はキリストの前に置かれてます。中世で宴席の席では動物の頭は宴席の長にふるまわれる習わしがあったそうです。

 

 

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ティントレット - 不明, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=279062による

ティンレット「最後の晩餐」ヴェネツィア、サン・ジョルジュ・マッジョーレ、1592年ー94年

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今までの簡素な晩餐と違い、上の作品では様々な食事がテーブルの上に並んでいます。ワイン、肉料理、パイ(?)の料理…こんな晩餐会だったら御呼ばれしたいですね。今までの作品はキリストと弟子だけの絵が多かったのですが、上の作品ではたくさんの働く使用人も描かれています。

 

 

 

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バロッチ「使徒たちの聖体拝領」ローマ、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂、1603年ー07年

 

厳粛な雰囲気です。キリストが、頭を下げてる弟子たちの頭に順番に生態を与えている

キリストが頭を下げている弟子たちに順番に聖体(パン)を与えています。

 

最後の晩餐からパンとワインを分け与えるミサがはじまりましたが、このミサは聖体拝領や、聖餐式とも訳されました。

 

 

 

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プッサン「最後の晩餐」エディンバラスコットランド国立美術館、1644年ー48年

寝っ転がって古代ローマ風な宴会です。

しかし、ただご飯を食べる風景というより、厳かな雰囲気が強調されています。

キリストのジェスチャーは、お盆をもち、これが聖体で自分の体であることを強調しています。

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日本ではあまりご飯を食べている最中を描いた作品は西洋に比べると少ないそうです。西洋では聖書の内容から食事が神聖な儀式という側面が強調されていったようです。

 

続く。

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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