リアル絵描き日記

画家明石恵のブログです。

擬人化ー可愛くて愉快な動物たちー

今日も生きてます。

 

 

もし動物に生まれ変わるなら何になりたいですか?

 

私は鳥になりたいです!

 

大空を自分の翼で羽ばたくのって夢がひろがります。

 

虹のトンネルをくぐったりラピュタを探したりしたいですね!

あの雲の峰の向こうに、見たこともない島が浮かんでいるんだ!

 

 

 

 

現実の私に近い動物は…ナマケモノですね。 

(微動だにせず。

 

 

 

絵には人間を別の物に置き換えて表現する擬人化という表現方法があります。

 

日本絵画の中で、擬人化の表現を用いて有名なのは鳥獣人物戯画です。

 

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蛙や兎が人間のように過ごしている姿が微笑ましい&面白いです。

 

平安時代末期から鎌倉時代初期に複数の作者によって描かれました。

漫画で使われる表現がみられるため、漫画の祖であるとみられているのは有名ですね。

 

 

今日は擬人画が用いられた作品を見ていきましょう。

 

歌川国芳は江戸時代末期の浮世絵師です。

擬人化の浮世絵をたくさん残しています。

 



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歌川国芳画「そめいろづくし」

団扇にするための団扇絵。

 

ねこ→ねこしぼり

狐→狐こん

狸→たぬきちゃいろ

鼠→ねずみいろ

 

それぞれの動物が自分にちなんだ色を染色しています。

 

 


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歌川国芳画「里すゞめねぐらの仮宿」

 

天保の改革で遊女を描くことが禁止されたため、すずめで表現しています。

 

題名にこの浮世絵が何を表現しているか示されています。

 

 

里→吉原遊郭

すずめ→吉原すずめ(吉原に詳しい人を意味する言葉)

仮宿→吉原が火災にあい、仮の場所で営業している

 

 

 

火災にあった吉原が、仮の場所で営業していることを伝える浮世絵です。

 

絵の中からちゅんちゅんちゅんちゅんたくさんの鳴き声が聞こえてくるようです。

 

すずめかわゆい。

 

 


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 歌川国芳画「金魚づくし玉や玉や」

 

金魚のシャボン売りがシャボン玉を吹いていて、周りの皆が夢中になっています。金魚もシャボン玉好きなんだな。(ほのぼの)

 

これは金魚を擬人化して江戸の風俗を描いた連作の一枚です。

 

 

 


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 歌川国芳画「八ツ當りどふけかふもり」(見立助六)

 

歌舞伎の演目である「助六」の場面を、コウモリが表現しています。

 

 


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歌川国利画「流行猫の温泉」

 

明治初期の温泉の風景。

お客様は神様ではなく猫様です。

(従業員もねこだわ。)

 

江戸時代も同じだったようですが、一階にお風呂、二階にお茶屋将棋を楽しめる座敷があります。

 

これは人間で表現されるよりも猫の方が百倍良いですね。

かわゆい。

 

 

 

 

 

 


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歌川芳藤画「志ん坂どうけかつらつけ」

カツラを切り抜いて動物に付けて様々なヘアスタイルを楽しむおもちゃ絵。

今の女の子の着せ替え付録みたいですね。

 

 

 

 

 

 


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葛飾北斎画「新版浮絵浦島竜宮入之図」

 

 

「浮絵」とは、遠近を強調して描かれた絵のことです。

 

そんなことより竜宮城の住人、みんな頭に魚のせてますけど。

北斎ジョーク。

 

 

 

 

動物って人間に比べてモチーフとして鑑賞に偏りが軽減されますので、有効な表現方法ですよね。

 

人間はどうしても男か女か、トランスジェンダーか、年代はどのくらいの人間か、顔の造形は…というところで選択することでいろんな思惑と意味合いがでてきてしまうし、鑑賞者もそれぞれ人間に対して思うところありますから、そういうの要らんっていうときは動物の方和むし、かわいいしいいですね。

 

でも私は人間を描くのが好きです。

 

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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鳥の王ー絵に描かれた孔雀の姿ー

今日も生きてます。

 

ぐっと寒さが増しました。

 

白湯がうまい季節です。

 

CorelPainterというソフトを使用しています。

 

アドビのイラストレーターが少し便利に複雑になったようなものかなあと思っていましたが、画面上に色を混ぜて使用できるパレットがあることに感動しました。(ペイント系のソフトでは当たり前なのでしょうか?)

 

筆&絵の具を使うアナログ人間の身としては、目的の色を彩度やRBGの%や色相環から探すよりも、パレット上で色を混ぜて作る方が楽です。

 

思い通りに行かず歯がゆいこともありますが、使いこなせれば頭のイメージを手早く再現できそうです。やる気!

 

 

 

さて、今日は描かれた孔雀について取り上げます。

 


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↑岡本秋暉画「牡丹孔雀図」絹本着色 安政3年

 

 

華やかな羽の模様が美しいという印象のある孔雀。

 

 

実はさそりやコブラなど、毒を持つ生き物を食べるという意外な側面もあります。

 

 

 

日本では優美な姿から花鳥画にしばしば登場します。

 

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歌川広重画 楓に孔雀

 

 


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伊藤若冲動植綵絵」のうち「老松孔雀図」

 

牡丹・松・孔雀…と縁起の良いモチーフが描かれています。

(若冲とか絶対孔雀大好きじゃん。ノリノリで描いてそう。)

 

孔雀のポーズには中国の影響がみられます。

 

 

 

 

中国で孔雀は「九徳」を生まれながら持っているとされている鳥です。

 

九徳とは、上にたつものに必要とされる九つの徳のことです。

儒教の経典の一つ書経(しょきょう)の中に記されているものが有名です。

 

 

 

其の一
寛(かん)にして栗(りつ)

寛大だがけじめがある

 

其の二
柔にして立(りつ)
争わず柔和だが、自分の為すべきことは必ず成し遂げるという決心がある。


其の三
愿(げん)にして恭(きょう)

正直にして誠実で、起居動作にその誠心が表れている。

 

其の四
乱にして敬
どのような状況でも自分の為すべきを正しく行い、相手を見下さない。


其の五
擾(じょう)にして毅(き)

柔順でありながら、強い意志を持ち、道に背くことはしない。


其の六
直(ちょく)にして温(おん)

率直で不正を許さないが、あたたかい心を持っている


其の七
簡(かん)にして廉(れん)

細かいことに拘泥しないが、筋道は立てている。


其の八
剛にして塞(そく)
意志が強く思慮深い。

 

其の九
彊(きょう)にして義(ぎ)
実行力に富み、道理をわきまえている。

 

 

 

 

相反するような素質ですが、上に立つ者にはどちらも必要な素質である、または、バランスも大事…というようなことかな。

 

九徳を備えた人間になりたいなあ。

座右の銘の候補にしておこう。

 

孔雀は生まれながらに持っています。

 

 

 

 なので中国で孔雀はおめでたい鳥とされ、牡丹とともに描かれ富貴の象徴とされました。

 


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日本に話は戻りますが、孔雀は日本には生息していなかったものの、推古天皇の時代に新羅から一羽献上されたという記録があり、たびたび日本に輸入されていたようです。

 

日本でも吉祥文様の一つで、工芸品などのモチーフになります。

 

また、仏教では毒を食らう孔雀は邪気を払う存在として信仰され、後に孔雀明王として神格化されます。

 

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孔雀明王像 12世紀 東京国立博物館

 

 

 

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 絹本著色孔雀明王

 

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 孔雀明王像 仁和寺

 

 

明王」というと、憤怒の表情をして表現されることが一般的です。(不動明王など)しかしこの孔雀明王は慈悲深い表情をして描かれるのが特徴です。

 

孔雀の上に乗り、一面四臂(四本の腕)の姿で表されることが多いです。

 

 

 

4本の手にはそれぞれ

 

倶縁果(ぐえんか:レモンのような柑橘類の果物で表現される)

 

吉祥果(きちじょうか=ザクロで表現される)

 

蓮華

 

孔雀の尾

 

を持っています。

 

 

また雨を予知する能力があるとされ、雨乞いの場面でも活躍するそうです。

 

 

 

日本で孔雀が登場する絵画は、大体花鳥画孔雀明王です。

 

 

 

孔雀がサソリやキングコブラを食べるというのは驚きでした。

食べてる場面確認したい。

美しい羽根も見たい…!

どうやら孔雀のオスがあのような美しい羽根を広げるのは春から(3月~)のようです。今はオフシーズンですね。

 

来年はまず孔雀をみにいきます。

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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絵の中に犬が描かれる理由

今日も生きてます。

 

液晶タブレットの設定が完了し(長かった…)、絵を描くソフトをダウンロードしました。

 

もっと簡単にできるものと思っていたので、自分の機械音痴を改めて自覚しました。ネットが無かったら解決できなかった。ネットの神様(?)に感謝。

 

このソフトの機能を使いこなすのだ!と燃えております。

その前にソフトの設定をする必要があるのですが…

 

 

自分のイメージが再現できるようにがんばります。

 

 

今日は日本絵画の中の「犬」についてみていきます。

 

現代では犬の絵というと大多数がペットの肖像なのではないかと思います。企画展などは猫ものの方が多いのではないでしょうか。

 

個人的には秋田犬のような大きめの犬は好きです。

小さい犬や痩せてる犬ってなんだか壊れそうなんだよ。かわゆいけど。

 

 

これまでブログで綴ってきたように、絵の中に描かれるものには特定の意味があったり、元となる話があったりします。

 

それはその絵が描かれた社会の背景によって理解できるものです。

 

日本の中で「犬」というと、縄文時代から飼われてきた身近な存在でありました。

 

物語や伝説の中で犬が登場し、そのお話が描かれることで「犬」が絵の中で見られるようになります。

 

 

 

 

 

 

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歌川国芳「武勇見立十二支・畑六良左エ門」

 

↑は、日本の古典文学「太平記」の中から畑時能(はたときよし)と犬。

敵陣の様子を吠え方で教えた賢い犬です。

 


太平記」は全40巻で、南北朝時代を舞台に後醍醐天皇の即位から、鎌倉幕府の滅亡、建武の新政とその崩壊後の南北朝分裂、観応の擾乱、2代将軍足利義詮の死去と細川頼之管領就任までを書く軍記物語。

(太平記 - Wikipediaより引用)

 

 

 

 

 

 

 

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安西景連の首と八房。月岡芳年「美勇水滸傳・里見二郎太郎義成」

↑は江戸時代に大流行した物語「南総里見八犬伝」に登場する八房。

以前南総里見八犬伝について取り上げました。

あらすじはこちらから確認してください↓

南総里見八犬伝! - リアル絵描き日記

 

 

 

このほかにも有名な物語としては、弘法大師空海の生涯を絵にした絵巻物「高野大師行状図絵」(こうぼうだいしぎょうじょうきずえ)があります。

 

この中に登場する犬は狩場明神(かりばみょうじん)が変身したもので、空海を導きます。

 

 

また、風景の中の一部として描かれた犬もいました。

 

 

わき役として描かれることが多かった犬ですが、犬そのものをモチーフとして描いたのものとして有名なのは俵屋宗達円山応挙の作品です。

 

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円山応挙

 

 

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長沢芦雪 「雪狗子図襖」

 

 

 

 

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『紅葉狗子図』1790年頃 絹本著色 ウォルターズ美術館蔵

 


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中村芳中光琳画譜」より「仔犬」

 


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伊藤若冲「百犬図」

 

これらの犬を見て思うこと…

それは、かわいい!!ということ。

 

脇役であった犬たちは可愛らしさを武器に(?)主役として絵の中に登場します。

 

伊藤若冲の犬は59匹描かれています。犬は安産、多産の象徴でもあったため、子孫繁栄を願ったという説もあるようです。

 

円山応挙長沢芦雪の犬は毛玉っぽい犬ですね。ころりころりしてて可愛らしい。

 

動物に癒しを求めるのは人間だけなのでしょうか。

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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唐獅子ってなに?ーライオンと何が違うのかー

今日も生きてます。

 

狩野派で有名な一枚といえばこれです。


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狩野永徳「唐獅子図屏風」

狩野永徳について

日本人なら知っておきたい狩野派の歴史ー天才永徳登場ー - リアル絵描き日記

 

この絵だけではなく、獅子が描かれた昔の絵を見て疑問でした。

 

 

獅子ってライオンだよね?

 

この絵に描かれてるの、ライオンじゃないよね?

(この体の模様はなんじゃい!)

 

 

 

 

今日はそんな疑問を解決すべく唐獅子(からじし)の画題について見ていきます。

 

まず、話は古代ペルシアのライオンから始まります。

 

 

古代ペルシアなどでライオンは聖獣とされていました。

 

ライオンは聖なるもの、王位、王家の血統、などの象徴で、夏の暑い季節の星座である獅子座は、占星術の中で太陽とも関連づけされていました。

 

そのライオンが文様化されるときに、ライオンの体には太陽の象徴でもあるロゼットが描かれていました。

 

 

ロゼットとは、中心から放射線状に広がる文様です。

 

よく見るような文様ですが、これは太陽を意味しているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてライオンは中国で聖獣として伝わります。

 

邪気を払う魔除けの意味を持つようになります。

 


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↑陶器に描かれた獅子

「赤絵獅子文瓶」明 東京国立博物館

 

 

 

 

 

また、中国には「玉取獅子」(たまとりじし)と呼ばれる文様があります。

 


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「玉取り獅子文食籠」根津美術館

 

「繍珠」と「獅子」が戯れる様子を文様化したものです。

 

「繍珠」とは、雌雄の獅子が戯れるうちに毛が玉になり、中から児獅子が生まれるとされたものです。

 

(この繍珠の正式な読み方がわかりません。どなたか知っていたら知らせてください。「しゅうじゅ」で、正しいのだろうか。)

 

このことから、玉取獅子は強い男子を得る吉祥文とされます。

 

 

 

 

さて、中国から経由で日本にも獅子が伝わります。

 

 

ライオンを見たことの無い日本人は獅子を中国風の架空の聖獣として受け入れ、円や渦が描かれた獅子文が生まれます。

 

 

 

 

唐獅子


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毛卍文(けまんもん)


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扇獅子

扇と獅子の文様で、唐獅子のたてがみだけで獅子を暗示している。


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獅子と牡丹

「百獣の王」と「百花の王」を組み合わせた文様。

組み合わせのよいものを意味する慣用句でもあります。


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ということで日本では体を巻き毛が特徴的な「唐獅子」像が描かれるようになりました。

この巻き毛には霊力があるとされています。

 

(巻き毛にまで霊力を宿す設定にしたのは微妙に謎ですね。)

 

仏教では悪を食べる守護獣と考えられ、仏像や寺社を守る獅子像は一対でおかれていました。

 

これが今神社の前にある狛犬に繋がります。

 

 

 

 

ちなみに竹内栖鳳がヨーロッパ旅行で見たライオンを描いた絵は↓

 


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竹内栖鳳「虎・獅子図」1901年

竹内栖鳳については↓

光の栖鳳 - リアル絵描き日記

 

 

唐獅子ではなく、現代の我々がイメージするライオンですね。

 

 

 

 

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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参考
「漫画でわかる日本絵画のテーマ」
(誠光堂新光社、監修矢嶋新)

「日本・中国の紋様事典」
(視覚デザイン研究所)

象ー優しくって力持ち!ー

今日も生きてます。

 

 

乾燥に襲われています。

 

良い感じに手がパサパサで

 

 

手がぁ…!!手があああ!!

 

 

独りムスカごっこに忙しい今日この頃です。

 

(バルス!)

 

 

 

 

 

 

さて、今日はについて取り上げます。

 


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↑は俵屋宗達の描いた「白象図」です。

 

勢いよく描かれた白い象が印象的ですね。

 

この絵があるのは京都の「養源院」です。


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養源院は、淀殿が亡き父浅井長政の21回忌のために創建しました。

しかし、25年後に火災でなくなってしまいます。

 

(そしてその25年間に豊臣家は滅亡し、徳川家康による天下統一がなされます。)

 

その後、淀殿の妹であるお江与の手で養源院は再建されます。

 

なぜ豊臣側の人間のお寺の再建を、敵であった徳川家康が許したのかというと、有名な「血天井」に理由があります。

 

 

養源院の本堂の左右と正面の廊下の天井は、伏見城落城の際に自刃した武将たちの血がしみた廊下の板が使われています。

 

家康は天下統一のための戦いの中で自刃した敵方武将たちの供養のために、伏見城の廊下を養源院などの寺に分け与えました。

 

血天井」と呼ばれ、今でも血の跡があります。

 

 

 

 

 

 

〇なぜ象がモチーフになっているのか

 


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普賢菩薩像(東京国立博物館蔵)↑

 

仏教の中で白い象は縁起が良く、神聖な動物とされています。

 

お釈迦さまのお母さんである「摩耶夫人」は、六本の牙を持つ白い象が自分の右のわきの下から体に入ってくる夢を見て、自分が身ごもったということを知ったといわれています。

 

白い象はお釈迦様の前世の姿であるとも言われています。

 


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普賢菩薩像(鳥取・豊乗寺蔵)

また、普賢菩薩は白い象に乗っている姿で表現されます。

 

(普賢菩薩は超絶ざっくり説明すると、いつでも悟れるけど悟れてない人々を救うために現世にいるね!というような尊い存在です。)

 

 

供養のため、神聖な存在である白い象を描かせたのであろうと推察します。

 

白い象が有名ですが、獅子と麒麟の絵もあるようです。

 

 

 

 

宗達は象を見たことあったのか?

 

俵屋宗達の絵を見て思うことがあります。

宗達は象を見てこの絵を描いたのか?ということ。

 

俵屋宗達が何年から何年まで生きていたのかは明確になっていません。

 

 

ただ、日本に初めて象がやってきたのははっきりしていて、1408年です。

 

今のインドネシアから、室町幕府の将軍への贈り物として黒ゾウが船できました。

 

その後何度か日本には象がやってきましたが、その存在が庶民に知れ渡るきっかけになったのは徳川吉宗が中国から呼んだ象です。

 

 

当時の日本は巨船の建造を禁止していたため、陸路で数か月かけて江戸に向かうことになります。

 

 

象が江戸へ向かう途中、長崎についたのだから天皇陛下にも見てもらおうと京都に寄り道します。

 

当時天皇に謁見するには、相応の官位が必要でした。

 

 

そこで象には、「四位広南白象(じゅうよんいこうなんはくぞう)」位階が贈られます。

 

 

そして中御門天皇にご挨拶します。

 

美術品や書物でしか知らない象を見た天皇はいたく感激されたようです。

 

 

その後象が江戸に到着すると、江戸っ子たちは象舎に押しかけました。

象に関する大量の出版物が発行されます。

 


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英一蝶 『衆瞽象を撫ず』図

 

 


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北尾政美「鳥獣略画式」

 

象を描いた絵の中には、これは本物を見たっぽい、というようなリアルなものもありますが、資料を見て描いたであろうデフォルメされたものもあり、そこを推察して鑑賞するのも楽しい画題です。

 

おそらく俵屋宗達は本物は見たことなかったのではないのかな?

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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桜ー日本人と共鳴する花ー

今日も生きてます。

 

桜を見る会が騒がれてますね。

 

昨日取り上げたように、最初日本で花といえば梅でした。

 

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しかし平安時代に日本的な物の見方や文化が広まると、桜に注目が集まります。

 

やがて花見は桜を見ることを意味するようになります。

 

江戸時代以降は花見が庶民にも広まります。

 

花鳥画や名所絵など、桜は浮世絵などに描かれるようになります。

 

そして桜は日本を代表する花となりました。

 


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横山大観「夜桜」

 

上は横山大観昭和5年にローマで開催された日本美術展に出品したものです。

 

作品の選定から会場の展示方法まで、横山大観に任されました。

 

富士山の絵が有名ですが、桜の作品もあったんですね。

 

 


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葛飾北斎「鷽垂桜」

 


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高橋由一「墨水桜花輝の景」

日本画の美意識を油彩画で表現したかのような作品。

 

 


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酒井抱一「桜図屏風」

 

 

ぱっと咲き、潔く散る桜は日本人の心を捉えました。

 

文様も数多くあります。

 


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桜文

桜の花の文様

 

 


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小桜

小さな桜の花を一面に散らした小紋

 


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枝垂桜

下に垂れ下がった枝振りを文様にしたもの

 


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枝垂桜の文様を散らしている

 


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桜散らし

桜の花を散らしたもの

 


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桜楓

桜と楓を取り混ぜて春と秋を対照させた文様

 


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花筏

花を乗せた筏が流れる文様

時間の流れを感じさせる

 


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桜川

流水に桜が流れている文様

 


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八重桜

八重に咲いた桜の文様

 


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変わり八重桜

 


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花霞

桜の花で霞の形をかたどったもの

 


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桜山

桜の名所「吉野山」を示す場合もある

 

 



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個人的には風流な花筏の文様が好きです。

 

 

 

桜は今の作家もモチーフにしている人が多いです。

桜の絵を飾りたいという人も多いのではないかと推察します。

私は松井冬子さんが描いた桜の絵もすきです。

 

 

というか全く関係ないのですが、秋田県出身かつ秋田美人の代名詞壇蜜さんがご結婚されたようですね。

 

今日婚約届けを提出されたそうです。

 

良い夫婦の日を選ぶなんて、何て可愛らしい人だ…!

 

おめでとうございます!

 

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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梅の意匠ー愛される系植物ー

今日も生きてます。

 

タモリ倶楽部のどこかの回で「梅水晶」が取り上げられていました。

 

 

私は名前も知らなかったのですが、二十代若者は他の世代よりも知っているそうです。

 

梅水晶は料理で、鮫の軟骨に梅肉を和えたものです。

居酒屋さんなどでお通しとしてもでてくるおつまみメニューでもあります。

 

私は梅の味はわかりますが鮫の軟骨の食感がわからないので、番組視聴中はずっと味の空想をしていました。

 

居酒屋さんに行く機会があったら(なかなか無い)是非食したいものです。

 

 

さて、余談は置いておいて今日は梅について取り上げます。

 

 


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狩野三雪画  老梅図(メトロポリタン美術館

 

 

松竹梅のひとつでもある「梅」は、春に先駆けて咲く縁起の良いモチーフです。

 

 

もともと中国が原産地。

 

奈良時代に日本に伝わりました。

 

詩の中で花といえば梅というほど愛されていた梅は、貴族たちがこぞって屋敷の中に木を植えるようになります。

 

学問が栄える頃に見事に咲くという言い伝えもありました。

 

梅の花を家紋にしたものも多くあります。

 

 

梅のデザインも様々あるので見ていきたいと思います。

 


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梅鉢

円で梅の花を表している。

 


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捻じ梅

花弁が捻れた形になっている。

 


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裏梅

花を裏から見て文様にしたもの

 


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槍梅

枝を槍のようにまっすぐ立てて並べたもの。

 


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枝梅

梅の枝を散らしたもの

 


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八重梅

梅の花を八重咲きにしたもの。

 


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光琳

光琳風の梅

 


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梅丸

梅の花を丸い形にしたもの。

 


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氷梅

氷の割れ目のようすの間に梅の花を散らしたもの。

早春を表しています。

 


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氷梅

氷片の間に梅を散らしている。

 


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梅形小梅

梅の中にさらに小さな梅を散らす。

 


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梅格子

梅の枝を格子状にしたもの

 

 


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梅の衣装で歌舞いてます。

 

 

梅の花はコロンとしていて可愛いですね。

 

 

狩野三雪の老梅図は、曲がりくねった梅の幹に並々ならぬ情念を感じます。

かっこよい。


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今日はここまで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

明石 恵 Aya Akashi website - 明石 恵 Aya Akashi website

 

参考

「漫画でわかる日本絵画のテーマ」

(誠光堂新光社、監修矢嶋新)

 

「日本・中国の紋様事典」

(視覚デザイン研究所)